格差・貧困
つくられる「素人」女性 〜「パパ活」の知られざる実態を明かす
交際クラブが満たす男女のニーズ
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「パパ活」とは現代の援交なのか

「パパ活」の実態についてコメントを下さい、と複数の週刊誌から先月たて続けに依頼をもらった。要は交際クラブに登録してお小遣い稼ぎをしながらオトコの人と「付き合う」女性が増えているんですけど、これはまた売春のカジュアル化ですよね? さらに言えば女性の貧困問題や格差問題も絡んでいますよね? という話である。

筋が通っていなくはない。収入がおぼつかない女性、条件の良い働き口が見つからない女性が、交際クラブでお金持ちの男性と知り合って、食事とセックスを「楽しみ」、税務申告のいらない「お小遣い」をもらう。

女性が富裕していればそんな現象はあまり見られないだろうし、低収入男性と結婚を狙うより高収入男性と不倫した方が経済的に自分を救うという格差問題がなければ交際クラブよりも婚活に勤しんだほうがいいわけだから。さらにその額が、バブル時代の愛人契約のイメージからかけ離れた額だということも、読者を驚かせているようだ。

コトバが実質を作り出すという話は社会学では定石だが、若い女性の売春も例に漏れず、援助交際、神待ち少女、ワリキリなどなど色々なコトバが与えられ、そのたびに多くのルポライターの手により話題にされてきた。

当然その売春内格差というのも存在するので、身体の値段に開きはあれど、援助交際をしていた女子高生が出会い系でワリキリをしたり交際クラブでパパ活していると思えば、同じ人を指して時代に流行る呼び名で遊んでいるだけと言えなくもない。

言えなくもないのだが、そう言ってしまえば身も蓋もないので、少し「パパ活」の実態を覗いてみようと思う。

何がウケているのか、何がねじれているのか。私は概要とコトバのユニークさよりも、その細部にこそ本質があると信じている。

「パパって興味ない?」

現在、交際クラブの門を叩く女性の多くは、それを渋谷や歌舞伎町に屯するスカウトマンに紹介されている。

漫画『新宿スワン』でもお馴染みの彼らは、主として風俗・キャバクラ・AVプロダクションの紹介業を生業としており、その他にも脱毛サロンやエステなど若い女性が利用する美容関係の割引会員の紹介などをしている者も多い。彼らの提供するメニューの中で「交際クラブ」「パパ活」はここ2年で急速に存在感が増した。

道を歩く女性に声をかけて足を止めさせ、話を聞いてもらうなり携帯電話番号の交換をするのが彼らの仕事の基本であり、「今の店どう?」「モデル系の仕事興味あったりしない?」「1日10万保証の出稼ぎ紹介できるけど」など彼らそれぞれが女性の食い付きの良いお決まりの第一声を持っている。

ここ1年でその第一声に「パパって欲しくない?」「パパ活とか興味ない?」「交際って登録してる?」という声がけをする者が急速に増加している。

彼らは、あらゆる女性を相手にしている。一般的な印象として、学生や素人の女性に言葉巧みに声をかけ、騙し騙しに風俗に落とすスカウトマンの姿がイメージされやすいかもしれない。

それも一理あるが、彼らの声をかける相手の女性の半数以上は、すでに風俗やキャバクラなどで働くいわゆる夜職の女性である。風俗の女性は、その店で古株となるとお客に与える印象があまりよくないため、それなりに頻繁に店を移ることが多い。そういう時に馴染みのスカウトマンに紹介を頼むのである。

ではなぜ、彼らは「パパ活って興味ある?」に声がけの第一声を集中させているか。

すでにキャバクラや風俗で働いている女性が新しい店を探すのは、タイミングの問題がある。まだ店を移ったばかりだったり、それなりの好条件で働けていたりして、近々に移籍の意志がない女性にとってはスカウトマンは不要である。しかしそこで一般的な存在となって比較的新しい存在であり、さらに言えば、風俗店ともキャバクラともかけもちが可能な交際クラブであれば、彼女たちでも話を聞くきっかけになるからである。

注意しておきたいのは、交際クラブに登録している女性の多くが、少なくとも風俗のスカウトマンの話を聞く立ち位置にいる女性であること、つまり「夜職」に興味があるということで、さらに、その中の多くが夜職の女性であることだ。

もちろん、風俗経験のないOLや女子大生、モデルらも登録しているが、スカウトマンの話をはなから聞きもしない女性はあまりそういうところにたどり着かないのである。

素人になってください

交際クラブは、女性会員のプロフィールと写真を男性会員にメルマガなどで送ったり、実際に事務所やスタッフを通して好みの女性を探したりできるようなシステムを持っている。

男性会員にも女性会員にもランクがあることもあり、高級会員のみに紹介される女性は単体AV女優やグラビアモデルの経験者、学歴や容姿が特徴だって優れている者などが集まっており、また、ほとんどの会員が閲覧できる女性は、ごく普通の容姿、プロフィールであることがある。

クラブのウリのひとつは、「お金で抱ける」女性と会えるシステムであるにもかかわらず、風俗店ではないことである。

美人が揃う高級風俗店で遊べる資金はあるが、味気ない風俗嬢ではなく、普通の女の子を紹介してもらって食事デートやホテルでの一夜を楽しみたい、という男性のニーズに応える。これは、クラブの男性へのウリだけではなく、女性に強調されるポイントでもある。

女性のクラブへの登録はスカウトマンなどを通して、事務所に面談に趣き、エントリーシートを書き、登録して問題なしと判断されれば、写真撮影などをして、数日〜一週間後には、クラブの女性リストに登録される。ここで注視すべきは、面談の際のエントリーシートの内容である。

生年月日、住所など基本事項の他に、男性に公開するプロフィールに記載する趣味や食べ物の好み、お相手へのひとこと、年齢をごまかすか否か、などを記入する。これは想像の範囲を出ないが、必ずあるのが、今まで経験した職業、在籍したお店の記入欄である。

これは、風俗の面接シートにもまた必ずある質問事項である。経験した職業の欄は、多くが「クラブ・キャバクラ・ソープ・店舗型ヘルス・デリヘル・セクキャバ・AV・その他」とある中から丸をつける方式になっている。さらに、店舗名や在籍した期間などが記入できる。

エントリーシートをもとにおこなう面接の際には、その職業欄の記入について、例えばソープとデリヘルに在籍したことのある女性であれば、「デート相手の男性には、その経験は特に言わないほうがいいけど、できる?」などとアドバイスされるようだ。

実際に現役のソープ嬢であるAは、以前犬好きが高じて資格をとった経緯があったため、男性向けプロフィール欄の職業は「トリマー」とすることになった。その際、「紹介された男性ともしお付き合いということになっても、そんなにソープでの経験を本領発揮しない方がウケがいいかも」と何気なくアドバイスされたという。

スカウトに入れ知恵されている女性の中には、あえて経験職を引き算して記入している者も多く、またソープに在籍中であっても、すでに退職していることにして面接に挑む者も多い。Aも、面接の際はすでに前月でソープを退店したと伝えたようだ。

ここに、ひとり素人の女性が誕生する。これは夜の業界としてはあまり珍しいものではない。

高級デリヘルや高級ソープでも、最も高く値がつくと言われるのは「初・初」女性と呼ばれる、業界未経験の女性の初出勤日の初のお客である。もちろん、実際にそうであるに越したことはないが、数多ある風俗店に、毎日風俗未経験の女性が初出勤するわけもなく、多くの店と女性は、なるべくお客にわからないかたちで、「初・初」女性を量産しているのである。

業界経験があっても未経験と嘘をついたり、すでにその店に在籍している女性が、その店にとって初めての客のところに、今日が私も初出勤ですと嘘をついて訪れるという意味だ。交際クラブも例にもれず、素人女性、初めて紹介される男性、という設定を作りたがる。

素人はつくられる

登録の経緯とエントリーシートを見ていると、巷で噂されるものと、交際クラブ自体に持つ印象が変わってくる。

女子高生の援助交際は、年齢的な問題で風俗店で働けない素人女性が個人的に客をとった。出会い系サイトや出会いカフェのワリキリは、容姿や体型、コミュニケーション能力などの点で風俗店で思うように稼げない女性、風俗店で働きながらも稼ぎに満足がいかない女性たちの受け皿となった。

交際クラブは、キャバクラや風俗で働く女性、AV女優らが、副業として「素人愛人」のコスプレをして登録する場、あるいは時間帯などの問題で風俗店勤務が難しい女性の受け皿になりつつある。風俗嬢か、素人か、という区分で言えば、確かに素人女性の登録も多い。しかし、彼女たち自身が、時間的に都合がよく、身バレや体力的なきつさも少なそうな「夜のお仕事」として、パパ活を捉えているのである。

風俗店で十分な稼ぎがあるような美人が、あるいは、昼職である程度安定した稼ぎのある女性が、なぜさらに副業を求めるのか。

いくつか類型があるが、例えば、スカウトマンが最も活発に行き来するのは、午前1時〜2時頃の歌舞伎町などである。ホストクラブの閉店時間に店から歩き出る女性たちは、彼らの恰好の餌食になる。売掛金の入金日が近いにもかかわらず、出勤日と平均の稼ぎを計算するとややおぼつかない、来月お金のかかるホストクラブのイベントがある、といった女性は、儲け話の前に脆い。

お金で身体を提供するという行為は、ある女性にとっては耐え難く、ある女性にとっては金額によっては可能な行為である。双方の総数が、時代によって変わることが多々あるとは思えないが、合法的な風俗店の「都合」によって溢れ出る女性たちが、素人女性となって世の男性の心を打つのである。

昼間の仕事との時間の兼ね合いが難しかったり、年齢的に働けなかったり、容姿に問題があって面接に落ちたり、或いは風俗店の不景気で出勤しても稼ぎが追いつかなかったり、店の決まりで2日出勤したら1日は休みをとらざるを得なかったり……。

彼女たちは、男性のニーズに合わせて玄人になったり素人になったりできる。

そして、素人女性を装わせる交際クラブは、男性に夢を与えるだけでなく、女性にも、他職との兼務可能で退会の必要性がないというメリットを与えて昨今、急速に両者のハートを掴んでいる。素人女性とのデートに浮足立つ一方と、効率と都合の良い夜職を見つけて浮足立つ一方のねじれを孕みながら。

すずき・すずみ/1983年生まれ。2004年、慶應義塾大学在学中にAVデビュー。東京大学大学院修了後、日本経済新聞社入社。2014年に退職し、現在は文筆業。
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