国際・外交
北方領土返還へ、安倍総理がロシアに持参した大きな「お土産」
プーチン大統領と膝詰めで3時間

首脳会談は3時間におよんだ

9月2日午後4時35分、安倍晋三首相を乗せた政府専用機は予定通り、ロシア極東のウラジオストク国際空港に着陸した。空港には、プーチン大統領の側近であるトルトネフ副首相・連邦極東管区代表が出迎えた。

安倍首相は直ちに宿泊先のアジムット・ホテルに入り、ほどなくして2012年9月に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の会場だった市内の極東連邦大学に向かった。

大統領令によって発足した「東方経済フォーラム」の第2回会合が9月2~3日に開催される。安倍首相以下、韓国の朴槿恵大統領、オーストラリアのラッド元首相、中国の陳昌智全人代常務副委員長をはじめ、日・露・中・韓・ASEANの主要企業のトップが参加する。

安倍首相は3日午後、全体会合「ロシア極東地域の再発見に向けて」でスピーチを行なう。

日本からは、首相同行の世耕弘成経済産業・対露経済協力相、野上浩太郎官房副長官、長谷川榮一首相補佐官、秋葉剛男外務審議官の他、朝田照男経団連日露委員長(丸紅会長)、飯島彰己三井物産会長、佐藤雅之日揮会長、村山滋川崎重工社長、孫正義ソフトバンクグループ社長、天間幸生北海道総合商事社長ら企業関係者約150人が参加。

ロシア側参加者はもちろんオールスターキャストで、同国最大の国営石油会社ロスネフチのイーゴリ・セチン社長以下、ミヘルソン・ノヴァテク社長、ミレル・ガスプロム社長、ガルシュカ極東発展相、チュクンコフ極東発展基金総裁、シェラハエフ極東投資誘致・輸出支援庁長官、ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)、そして極東電力(ルスギドロ)会長を兼務する先述のトルトネフ副首相らである。

改めて言うまでもなく、安倍首相のウラジオストク訪問の目的はプーチン大統領とのトップ会談であった。2日夕から食事を挟んでの日露首脳会談は、極東連邦大学で3時間に及ぶものだった。

野上官房副長官はロングラン首脳会談後、同行記者団へのブリーフィングで明らかにしなかったが、この会談中に安倍、プーチン氏両首脳はノートテイカー(記録係)を同席させない双方通訳のみのテ・タテ会談も行っている。

安倍総理が用意した「お土産」

実は、安倍・プーチン氏両首脳のテ・タテ会談は、5月6日のロシア保養地・ソチでの首脳会談の際にも行われている。

2016年5月6日、ソチにて〔PHOTO〕gettyimages

対露経済極力「8項目」を提示した、その時の首脳会談はやはり夕食を挟んで3時間10分行われたが、そこでも2人は約40分膝を交えて話し合っている。そして、その会談内容は今なお明らかになっていないのだ。

では、今回のテ・タテで2人は何を話し合ったのか。

当然、北方4島返還問題だ。

1956年10月19日の日ソ国交回復共同宣言調印以来、60年間何ら進展のなかった領土問題にケリをつけたいという強い思いが安倍首相にある。北方領土の帰属問題を解決して日露平和条約締結に弾みをつけるべく「お土産」をプーチン大統領に持参したのだ。

まず、その「お土産」である。最大の目玉は、ロシア人の平均寿命向上のための具体的支援だ。日本の最先端の技術・施設を備えた病院と日露健康長寿センターの建設である。

その他にも厳しい自然環境の極東・東シベリア向けの寒冷地域仕様の住宅建設、廃棄物処理システムや上下水道の完備など快適・清潔な住みやすい都市づくりの協力である。

それが、平均寿命の向上につながり、約600万人まで減少した極東地域の人口減に歯止めがかかる。2年後の3月にはロシア大統領選が控えている。再選を目指すプーチン大統領からすれば、国民の目に見える日本からの経済協力を引き出したことは大きな成果となる。

一方の安倍首相は12月の日露首脳会談で、逆にプーチン大統領からその代わりに領土問題で譲歩を引き出すことが、自らに課したミッションである。

同会談は「山口県内の温泉旅館で行われる」と、一部全国紙の報道で大々的に報じられた。しかし、それは事実ではない。

日露首脳会談は12月12日の週に安倍首相の地元・下関市内にある料亭旅館「春帆楼」で行われる。同店の名付けの親は明治の元勲・伊藤博文元首相であり、1895年(明治28年)に行われた日清講和条約締結の会場が他ならぬ「春帆楼」2階の大宴会場だった。

日本全権代表の伊藤首相(当時)は、清国の西太后の寵臣であり清国全権代表だった李鴻章とロングラン交渉の末、戦争賠償金(2万両)と領土割譲(遼東半島や台湾など)を獲得したのである。

安倍首相はその「春帆楼」でプーチン大統領を相手に北方領土返還問題で具体的な進展を得るべく、タフな交渉に臨むのだ。