企業・経営
新生・大塚家具はなぜ大失速したか 〜これでは「親子共倒れ」も!?
新路線は早くも正念場

父と娘の激しい対立の末、新しくスタートした大塚家具が大失速している。経営権を掌握した娘の久美子氏は、顧客層を広げる新しい戦略を打ち出したが、新路線は早くも正念場を迎えた。

一方、父親の勝久氏は、古参の社員とともに、従来の大塚家具の路線を継承する新会社を設立した。

久美子氏率いる新生・大塚家具は、低価格路線を追求し、イケアやニトリと対決するというイメージがあるが、そうではない。久美子氏が掲げる戦略はあくまで中級家具路線の維持なのだが、中間層が消滅しつつある日本において、その戦略が通用するのかは何ともいえない。

会員制という独特の販売手法で急成長

大塚家具が8月に発表した半期決算の数字は業界関係者を驚かせた。売上高が前年同期比20%減の240億9300万円にとどまり、営業損益は19億7300万円の赤字に転落したからである。

同社は、創業者である大塚勝久氏が一代で築き上げた企業。当初は埼玉県の春日部市を基盤にした小さな家具店だったが、会員制で顧客を囲い込む独特の販売手法で急成長し、日本有数の家具チェーンに成長した。

2006年には売上高が700億円を突破し、経常利益が53億円に達していたが、この頃をピークに勝久氏が編み出した販売手法が時代に合わなくなってくる。

2009年には売上高が600億円を切り、約14億円の赤字を計上。勝久氏は経営悪化の責任を取る形で辞任し、代わって娘の久美子氏が社長に就任することになる。

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久美子氏は、従来の路線を見直し、顧客の間口を広げる新しい戦略を打ち出した。同社の売上高は下げ止まり、13億円程度の経常利益を維持する状況が続いていたので、とりあえずは久美子氏が提唱した路線は定着したかに見えた。

ところが、この新路線に対して創業者の勝久氏はずっと疑問を抱いていたようである。

2014年12月期の決算で再び赤字に転落したことをきっかけに、勝久氏が久美子氏に辞任を迫り、自身がトップに就任。ところがその半年後、今度は久美子氏が勝久氏を辞任に追い込み、代表に返り咲くという親子バトルが勃発した。

バトルには勝利したのだが…

バトル勃発当時、同社の株式を最も多く保有していたのは創業者の勝久氏で、2013年12月末時点でのシェアは18%だった。娘の久美子氏は、資産管理会社を通じて約10%の株式を所有している状態だったが、久美子氏はファンドなど外部株主を味方に付ける戦略に出る。

久美子氏は、金融機関に勤務した経験がありプレゼンが上手い。社外取締役の積極的な登用や、配当の額を2倍にするなど、コーポレートガバナンスを意識した経営方針を次々に打ち出し、外資系ファンドなどを中心に委任状争奪戦(いわゆるプロキシーファイト)を展開した。

一方の勝久氏は、従業員の支持があることを強調していたが、状況は次第に不利になっていく。最終的には2015年3月に行われた株主総会において、久美子氏側が61%の票を得て取締役に選任され、勝久氏は会社を去ることになる。

勝久氏が会社から完全に退いたことで親子間のバトルに勝利した久美子氏は、これをきっかけに会員制を事実上撤廃するとともに「お詫びセール」を展開。満を持して自らの新しい戦略を推し進め、2015年12月期には黒字転換を果たした。同社は完全回復したかのように見えたが、内実は違っていたようだ。

当初、久美子氏はバラエティ番組なども含め、数多くのテレビ番組に出演し、新しい大塚家具のイメージ作りに邁進していた。実際、大規模セールの効果で客数そのものは順調に伸びていたと考えられる。

ところが、一連のセールは需要の先食いとなってしまい、今年に入ってから売上が急減速してしまったのだ。同社は通期の業績見通しについて5億円の営業黒字としていたが、半期決算の結果を受けて39億円の赤字に修正している。

一方で、会社を追い出された父親の勝久氏は、久美子氏への対決姿勢を剥き出しにしている。大塚家具に対抗するため、新しい家具店である「匠大塚」を設立。今年6月には勝久氏の生まれ故郷であり、創業の地でもある埼玉県春日部市に大規模家具店を出店し、決意の程を示している。

匠大塚の春日部本店は、西武百貨店跡をそのまま活用した巨大店舗で、5フロアで2万7000平方メートルの広さがある。店内には1万5000点の高級家具が並び、以前の大塚家具と同様、店員がつきっきりで顧客に対応するスタイルを採用している。

高級感を演出するため、ポルシェのクラシックカーや、工業デザイナーの奥山清行氏らが手掛けたコンセプトカーなども展示されている。まさに高級家具の販売にこだわる勝久氏のコンセプトを全面に押し出した店舗設計といっていいだろう。

こうなると勝久氏と久美子氏は、まだ壮絶なバトルを続けているという図式に見えるが、現実には両社が競合する可能性はほとんどない。

低価格帯の商品もカバーするようになった大塚家具と、高級家具路線にシフトした匠大塚とでは、狙う顧客層や販売手法がまるで異なっており、もはや顧客を奪い合う関係にはなっていないからである。

ただ、両社が直接競合しないからといって、両社の将来は明るいのかというと必ずしもそうとはいえない。むしろ両社ともにうまく顧客を取り込めず、失速してしまう危険性すらあるのではないか。