磯山友幸「経済ニュースの裏側」
2016年09月11日(日) 磯山 友幸

大手都市ガス「電力参入」が絶好調!の理由

大手都市ガス、絶好調

今年4月に電力小売りが全面自由化され、一斉に「新電力」が家庭向け電力小売り事業に新規参入したが、そうした中で大手都市ガス会社が順調なスタートを切っている。首都圏で家庭向け電力小売りに参入した東京ガスは当初、初年度の目標としてきた40万件の顧客獲得を4カ月で達成、目標を53万件に引き上げたと報じられていた。

関西エリアで電力事業を展開する大阪ガスも、20万件という初年度目標を掲げているが、すでに17万件の契約を獲得した。名古屋を拠点とする東邦ガスも当初1カ月で1万件の契約を取るなど順調に滑り出した。都市ガス大手が大手電力会社にとっての最大のライバルになってきた。

都市ガス大手が順調に電力小売りの契約を獲得している背景には、同じエネルギー会社として各家庭にネットワークを持っていることが大きい。通信系なども家庭とのつながりがあるが、カバー率はガスの場合、ほぼ100%で、圧倒的に高い。きめ細かい顧客サービスを展開する素地があるわけだ。

東京電力の広瀬道明社長は毎日新聞のインタビューの中で、「新電力ナンバーワンを目標に、達成までやり抜く」と意気込みを語っていた。競争は激しいものの、環境は都市ガス大手にとって優位性があり、他の新電力を凌駕できる余地は十分にある。

大阪ガスはガス契約をしている家庭を対象に新たに「住ミカタ・サービス」という新サービスを展開。ガス機器のメンテナンスだけでなく、エアコンの修理のほか、風呂や台所などのクリーニングなどにサービスを拡大している。住宅のリフォームの相談などにも乗っている。顧客との関係の「密度」を上げることで、ガス契約から電力小売りなどに契約を広げていく戦略だ。

リフォームや建て替えのタイミングを早期に知ることで、家庭内の設備インフラを総合的に提案できるようにするのも狙い。特にガスを使った温水床暖房などは家の建設設計と同時に組み込まれるケースが多いことから、そのタイミングで電力や通信の契約も合わせて一括受注する体制を狙う。

ガス会社から「総合エネルギー会社」へ

経済産業省の資源エネルギー庁によると、「小売電気事業者」として登録しているのは8月9日時点で334事業者にのぼる。そのうちすでに一般家庭への電力供給を始めた会社は100社あまり。今後、事業開始を予定している事業者もあるが、ほぼ出そろって来た感じだ。

参入したのは、大手都市ガス会社のほか、静岡ガス&パワーや中央セントラルガスといった「ガス系」、昭和シェル石油、東燃ゼネラル石油、JXエネルギーといった「石油元売り系」、伊藤忠エネクスホームライフ関東やミツウロコグリーンエネルギーといった「商社系」のほか、KDDIなどの「通信系」や、東急パワーサプライなどの「電鉄系」など多岐にわたる。

各社とも、大手電力会社に比べて価格が安いことを売り物にしているが、各社のもともとの事業サービスと組み合わせた料金体系を取り入れるなど、工夫をこらしている。

変わったところでは、生活協同組合が事業者として事業を開始したところもある。大阪いずみ市民生活協同組合では「コープでんき」と銘打って事業を開始。価格が安いことも売りのひとつだが、「『コープでんき』の2016年電源構成は、FIT(再生可能エネルギー)を38.5%(全国平均の3倍以上)で計画しています」として、環境配慮を前面に打ち出している。エコ意識の高い生協組合員を意識した特長ある取り組みと言える。

もっとも、新電力はまだまだ「乱立状態」で、価格体系などが見えにくいことから、切り替えを躊躇している消費者も多い。インターネットには価格の比較サイトなども登場しているが、競争が収斂していく様子を見ている人たちは少なくない。緒戦で一定のシェアを獲得した新電力に、今後、様子見をしている消費者が契約に動くことになるとみられる。

そうなった場合、価格だけでなく、サービスをどう周知するかがポイントになる。このため自社のもともとのサービスで既存ネットワークを持っている事業者がより優位に立つことになりそうだ。そうした面でも、ガス大手が従来の顧客サービスの拡充に動いているのは正しい戦略だろう。

電力VSガスの行方

今後、IoT(インターネット・オブ・シングス)と呼ばれる動きが加速し、家庭内の電気機器やガス機器、通信などがインターネットで結ばれて管理される態勢になっていく中で、「家庭内インフラ」の窓口一元化が進むことになりそう。電力・ガスなどエネルギーに加え、インターネット通信や電話、CATV、防犯システムといった家庭に関わるサービスを一企業が一括受注して一括管理する方向へ進んでいくに違いない。

それだけに、通信事業者やCATV会社など自社の既存事業を守るためにも電力小売りに参入しているという面が強い。今後、合従連衡を経て集約されていく中で、「総合家庭サービス会社」が誕生してくるのだろう。その場合も、エネルギーを基幹とするガス会社が優位に立つ可能性はある。

もちろん、ガス大手が安閑としていられるわけではない。都市ガスの小売り自由化が迫っており、電力会社が家庭向けのガス事業に参入してくるのだ。

今は守勢に立っている電力大手は、資本力ではガス大手を圧倒するだけに、ガス事業参入では強力な競合相手になる見込み。いずれは大手ガス会社と大手電力会社の統合なども起き、早晩、総合エネルギー会社が誕生してくるに違いない。

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