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アメリカは本当に「9月利上げ」に踏み切るのだろうか?
イエレン発言を読み解く
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8月26日、イエレン連邦準備理事会(FRB)議長は、米ワイオミング州ジャクソンホールにてカンザスシティ連銀が開催した経済シンポジウム(通称、ジャクソンホール)で、「連銀の政策目標が達成されつつあり、利上げを行う論拠が高まった」と発言した。

8月中旬以降、複数のFRB高官が「9月の利上げも含め近い将来の利上げが可能」と述べて来た。そして、FRB議長自ら利上げの必要性を示したことは、多くの投資家に利上げが近づいていることを認識させることになった。それによって、講演終了後の金融市場で米金利上昇・ドル高につながった。

一方、米国および世界経済の現状を冷静に考えると、本当に利上げが可能か不透明な部分もある。

FRBが早期の利上げを目指した場合、市場が混乱しリスクオフが進むことも考えられる。当面、米国の金融政策に対する投資家の思惑が市場を左右することになるだろう。FRBの政策動向には一段と注意が必要だ。

すべては「データ次第」

ジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演原稿を見ると、雇用の改善が進み完全雇用が達成されつつあること、そして物価は数年のうちに目標の2%に到達するとの見方が示された。

その上で議長は、堅調な労働市場の動向を取り上げ、数ヵ月のうちに利上げを進める論拠が高まったと述べた。これは、利上げへの注意喚起だ。この部分に注目すると議長の講演はタカ派だったと言える。

一方、同議長は慎重な政策スタンスを示し、利上げへの懸念が過度に高まらないよう配慮してもいる。講演の中では、現在の慎重な政策運営の重要性が示されている。そして、議長は利上げの可能性はあるが、すべては“データ次第”とも述べている。そのスタンスは従来と変わらない。

今回のイエレン議長の発言は、ダドリーNY連銀総裁やフィッシャー副議長らFRB高官の発言内容と共有する点が多い。連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者の多くが、今後の利上げに前向きな姿勢であることがわかる。

議長講演での発言を受けて、金融政策の動向を反映しやすい米2年金利は6月上旬来の0.80%台に上昇した。為替相場ではドルが主要通貨に対して上昇し、ドル/円は101円台半ばをつけた。

ただし、今後、ドル高が続くかは慎重に考えるべきだ。通貨の価値に変動を与えるインフレ率を加味すると、実質金利(名目金利-インフレ率)は、デフレが進むわが国の方が米国よりも高い。そのため、円はドルに対して強含みやすい。ドル高による米国経済の圧迫も無視できない要因だ。