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フランスのビーチを揺るがす「女性用水着」問題の理不尽
なんでこれがいけないの?
〔PHOTO〕gettyimages

「ブルキニ」とは何か

「ブルキニ」というのは、ブルカ(イスラム女性の全身を覆う衣装)+ビキニという意味で、素材は水着と同じだが、フード付き長袖の上着と、長いパンツになっている。イスラム女性のために考案された水着で、これを着れば、人目に触れるのは顔と手と足先だけになる。つまり、コーランの教えを守って泳ぐことができる。

ところが、これがフランスで大問題に発展している。ニースやカンヌやコルシカ島など南フランスの12の自治体が、ブルキニでの海水浴を禁止したからだ。

理由は、海辺の風景に合わないとか、イスラム教の女性差別の象徴だとか、あるいは、テロが頻発しているために、このような女性がいると皆が不安を覚えるとか、いろいろ挙げられているが、どれも説得力に欠ける。

ドイツのプールでは以前から、不衛生だという理由でブルキニを禁止していたところが多く、それはそれで一応、納得できたが、海では、誰がどんな格好で遊ぼうが、泳ごうが、勝手ではないのか? 私には、砂浜に全裸で寝転がっている男性の方がよっぽど目障りだ(北ドイツの海岸にもイヤというほどいる)。

一部には、もっと正直(?)に、「我々の西洋文化がイヤなら帰れ!」という声もあるが、フランス人だって、今まで郷に入って郷に従ってきたとは思えない。そもそも、かつて武器を携えて世界中にキリスト教を広めたのはいったい誰だったのか?

そんなわけでニースでは、ある人権保護団体が、ブルキニ禁止は不当であるとして訴えを起こしていた。女性が何を着れば差別されており、何を着れば自由であるかを他人が決めることこそ、女性の人権無視であると。

ところが8月22日、行政裁判所がこの訴えを退け、ブルキニ禁止は妥当であるという判断を下した。体を覆い隠すことは女性蔑視を助長し、民主主義の理念に合わないからだそうだ。これにより、少なくとも現在ブルキニを禁止している12の自治体では、当局のお墨付きが得られたわけである。ニースでは、違反金が38ユーロだそうだ。

ちなみに、ビキニは発表された当時は、風紀を乱す破廉恥でスキャンダラスなものとみなされ、アメリカでも60年代初めまで着用禁止だった。ほんの50年ほど前の話だ。当時は肌を出すのがダメで、今は肌を出さなければダメ。ずいぶん勝手な話ではないか。

イスラム女性の服装 〔image〕iStock
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