週刊現代
北欧デンマークからの警告「その手術と薬、はっきりいってムダです」
高齢者医療の最先端に学ぶ

風邪に薬は出さない

「クリニックに行くと、広い診療室に案内され、医師が握手をして迎えてくれます。日本の病院のようにカーテンの仕切りなどではなく、完全な個室なのでプライバシーも保たれますし、親密な雰囲気で医師と信頼関係が築きやすかったですね」

デンマークの首都コペンハーゲンに住む日本人、鈴木優美さんは初めてデンマークの病院を訪れたときの印象をこう話す。

「日本とデンマークの医療は制度の面でも意識の面でもまったく違います。

患者には必ず『かかりつけ医』がいて、診てもらうには予約が必須です。日本のようにアポなしで大病院を訪れるということはまずありません。インターネットでかかりつけ医の空いている時間を調べて、予約を入れてから出かけます。

一人当たりの診療時間は15分ほどです。受診の際の主な症状だけでなく、普段ちょっと気になったことなどもゆっくり話せます。時間がないからと途中で追い返されるようなことはないですね」

デンマークの医療は、しばしば世界で最も充実していると評される。OECD(経済協力開発機構)も「卓越した医療制度が整備されている」と讃えるほどだ。しかも医療費は、基本的にすべて無料である(ただし、一部の歯科治療は除く)。税負担は重いが、その分、無駄な医療費に対する国民の目も厳しい。同じ国民皆保険でも、医療費の使われ方に対する意識が低い日本とはそこが違う。

これだけ聞くと、さぞかし素晴らしい治療が行われているだろうと思うが、実際のところは、日本人の想像するものとはまったく違う医療サービスがデンマークでは提供されている。

デンマークの政府関係者が語る。

「この国では自己責任が徹底されており、簡単な病気、例えば風邪を引いたくらいでは『自分で治しなさい』と、病院では診てくれない。たとえ予約を入れて診察を受けても『ゆっくり寝ていれば治る』と言われるのがおちで、薬を出されることはまずありません。

その一方で、個人の努力ではどうしようもないような大きな手術や難しい治療は、たとえそれが何千万円かかったとしてもすべて無料です」

デンマークの医療制度で最も日本と違うのは冒頭にも話が出た「かかりつけ医」の存在だ。多摩大学大学院教授で海外の医療事情に詳しい真野俊樹氏が解説する。

「デンマークでは、どんな病気であってもまずは、ジェネラリストであるかかりつけ医を受診することがほとんどです。症状が深刻で専門医の治療を受ける必要があると判断されれば、初めて大きな病院に行くことになる。日本のように、最初から大病院で受診することはありません。

デンマークに限らず、スウェーデンやイギリスではかかりつけ医や在宅ケアに携わる看護師のサービスが充実しており、QOL(生活の質)の向上を助けてくれるので、日本のように少しのことで病院にかかるような必要がないのです」

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