イーロン・マスクが東レを指名? 宇宙ビジネス「夢の素材」で大飛躍となるか
世界シェア首位の実績とノウハウ
〔PHOTO〕gettyimages

脚光を浴びる「炭素繊維」

鉄よりも強くて軽い素材「炭素繊維」の夢を大きく膨らませるニュースが飛び出した。

先週水曜日(8月17日)付の日本経済新聞が報じたもので、あのイーロン・マスク氏が率いる宇宙開発ベンチャー「スペースX」が、今後開発する大型ロケットや宇宙船の機体に炭素繊維を使う方針を決め、今秋の最終合意を目指して東レとの長期供給契約の締結交渉を進めているというのだ。

当の東レは、「我々がお話しできることは何もない」とノーコメントの姿勢を崩していない。が、実現すれば、ボーイング787など航空機の機体への本格供給に続く快挙で、素材としての炭素繊維の可能性を改めて示す動きと言える。

だが、東レの成長路線を固めるには、航空機やロケット、宇宙船といった先端分野への供給だけでは心許ない。というのは、こうした先端分野は、東レの業容に比べて市場規模が小さいからである。かねて期待されているように、大衆車クラスの自動車のフレームやボディのようなマス(大衆)市場にくさびを打ち込む戦略が、東レには求められている。

新たなアライアンス(提携)が生まれるとすれば、東レとスペースXほど対照的な企業の組み合わせも珍しい。

国内繊維メーカー首位の東レは、三井物産の出資で大正15(1926)年に「東洋レーヨン」として誕生した老舗企業だ。誕生以来、内外から積極的な技術導入を行い、様々な化学繊維を開発・製造してきた。戦後の復興期には、朝鮮戦争特需を背景に日本経済を先導したこともある。繊維不況や日米繊維摩擦、円高、石油危機、途上国の追い上げといった数々の試練に直面、1970年代には3度も最終赤字に転落して存続が危ぶまれたこともあった。

新素材として脚光を浴びている炭素繊維の開発は、この1970年代の苦境の真っ最中にスタートした。当時は、釣り竿や自転車のフレーム、ゴルフクラブなど地道に実用化の道を探り、ニーズを掘り起こして事業化に繋げてきたという。こうした経緯から、炭素繊維は長年の努力が実を結んだもので、長期的な視野を持った研究開発の重要性を示す好例としてしばしばとりあげられてきた。

2014年11月には、米ボーイング社との供給契約を見直して、炭素繊維の供給対象を現在の主力旅客機787だけでなく、2020年の1号機納入を目標に開発中の次世代機(777X)向けにも拡大すること、それによって「受注額が1兆円を超す」ことなどを発表、経済界を驚かせた。