「名古屋の山ちゃん」が、「世界の山ちゃん」になるまで
【追悼・山本重雄社長の経営哲学 後編】
自身をモデルにしたマスコットキャラクター「鳥男」と並んだ山本重雄会長(名古屋市中区の本社ビルで)〔PHOTO〕川柳まさ裕(以下同)

「世界の山ちゃん」の創業者・山本重雄さんが、21日、名古屋市の病院で亡くなられました。享年59。「山ちゃんの経営哲学」を追究した記事をここに再掲載します。(前編はコチラから

ヤマリンピック!?

「本日の感想を会長にうかがいましょう」

司会者からマイクを渡された男は、締めの挨拶をするため壇上に立つと、驚くほどの大声で第一声を発した。

「皆さーん、カイチョーですかぁ!」

ホールを埋め尽くした従業員は、一斉に「ウォー!」と歓声を挙げた―。

1月30日、居酒屋「世界の山ちゃん」(以下、山ちゃん)をチェーン展開する「エスワイフード」(本社・名古屋市)は、功績のあった社員やアルバイト店員を表彰する「ヤマリンピック」と銘打たれた式典を開いた。

創業者であり会長の山本重雄(52)は、ダジャレやオヤジギャグが大好きだ。イベント名だけでなく、締めの挨拶からも、それが伝わる。

会場の山ちゃん本丸店(名古屋市中区)のホールに各店舗の従業員が集まり、自作のVTRや寸劇を披露して、いかに客を集め、売り上げを伸ばしたかとPR合戦を繰り広げる。

また、アルバイトの中から選ばれた者が、テレビ番組『料理の鉄人』よろしく、新メニューを披露し、山本をはじめ幹部が試食してチャンピオンを選ぶ「山ちゃんの鉄人チャンピオン」も行われた。こう言ってはなんだが、どれも学園祭を思わせる内容である。

'09年後半の仕事ぶりを高く評価され、社員に与えられる最高の賞「MVP社員」(名古屋エリア)に輝いたのは、JR名古屋駅に近い駅西3号店(名古屋市中村区)の店長だった高橋広治(31、現・名駅太閤店店長)である。受賞後、マイクを握った高橋は、高らかにこう宣言した。

「山本会長から任された店を、僕は軍隊にします!」

「軍隊」という突飛な言葉と飲食のサービス業という職が結びつかず、少々不穏当にも思えた。高橋に言葉の真意を尋ねると、彼は照れ笑いを浮かべて言った。

「アルバイトに相当に厳しく接して、遅刻や当日欠勤などをさせないよう規律を守らせてきたので、おのずと"軍隊"という言い方になっちゃったんですよ」

後述するが、高橋は軍隊式に規律を守らせるばかりではなく、アルバイトとの間に、ややもすれば敬遠されがちな熱い青春ドラマのような関係を築く。山本は高橋の仕事ぶりを、こう評価する。