日本の新聞記者はなぜ「戦場」に向かわないのか
「自己責任」という言葉の裏側
ジャパンプレス代表の佐藤和孝氏(筆者撮影)

文/Pan Asia News大塚智彦

戦場取材への思いを問い続ける

ジャーナリストの山本美香さんがシリアのアレッポで政府軍の銃撃を受けて死亡して8月20日で丸4年となる。それを前に18日、東京都内で山本美香さんが撮影した写真絵本『これから戦場に向かいます』(ポプラ社)の出版記念講演会が開かれた。

講演会には山本美香さん銃撃の瞬間まで共に活動してきたジャパンプレス代表の佐藤和孝氏や美香さんのご両親も参加し、母・山本和子さんが写真絵本を朗読した。

佐藤氏は「ジャーナリストはなぜ、戦場に向かうのか」と題し、自身の体験や思い、各国の記者やカメラマンが語った「なぜ戦場に向かうのか」「命を懸けてでもやる仕事か」などのコメントを報告した。

山本さんの死後、佐藤氏は欧米の記者やジャーナリストにインタビューし、「なぜ戦場に向かうのか」と問い続けている。

2012年シリアのアレッポでアサド政権側から銃撃を受け負傷したトルコのアナトリア通信のカメラマン、シナン・ギュル氏は「座っているだけでは感じられない人生を感じたい。戦場で起きていることをほかの人に感じてもらい、経験してもらうことが仕事。もともとリスクは承知でやっている」と戦場で報道し続ける理由を語ったという。

2012年シリアのホムスで砲撃を受け即死したフランス国営放送のジル・ジャギエ記者の妻は自身もジャーナリストとして夫の死の現場にいた。彼女は「彼は何も怖がらなかったが、死にたくはなかった。紛争地で仕事していたがそれは死ぬためではなかった」「この仕事を続けるか自問している。仕事は続けるだろうが、シリアにはもう行きたくない」と漏らしたという。

隻眼の米女性記者として知られる英紙サンデータイムズのマリー・コルビン記者も2012年2月、シリア・ホムスで政府軍の砲撃により死亡した。同僚のポール・コンロイ記者は「マリーは無実の子供や一般市民が殺されていることが許せなかったから、事件の目撃者になりたい、そして報道することで殺戮を止めさせることができると思っていた。ジャーナリストの仕事は重要、ひるむことなく我々は仕事を続けたい」と佐藤氏に告げた。

こうした言葉は、山本美香さんの「外国人ジャーナリストがいることで最悪の事態をふせぐことができる」という信念に通じるものがあり、佐藤氏も「命を懸けてまでやる仕事とは思わないこともあるが、私も現場に行くこと、伝えることを続けたい」との決意を改めて示した。

今回出版された写真絵本について佐藤氏はこう話す。

「戦争を取材していると、こんなことやっちゃいけないと痛切に感じる、そういう平和への思いが詰まっている。そうした平和への思いのバトンを子供たちにも読んでほしい」

山本美香さんの父・山本孝治さんも「美香の言葉が聞こえてくるようだ。遠くに行っていたはずの美香が復活した、復活の本だと思う」と述べた。