止まらない「円高」にアベノミクスはどう立ち向かうのか
今こそ労働市場の構造改革を!
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米国の景気はピークを迎えつつある

ここへ来て、為替市場で一段と円高傾向が鮮明化している。7月29日には、ドル/円の為替レートが99円台半ばまで円高に振れた。これは、英国のEU離脱決定の影響によって、投資家のリスク回避が進んだ6月24日(1ドル=99.02円)以来の水準だ。

背景にあるのは、米国経済の先行き不透明感だ。足許の経済指標やこれまでの景気循環から、米国の景気がピークを迎えつつある可能性が高まっている。米国企業の海外収益の割合が高まっていることを考えると、ドル高は米国経済にとって無視できないマイナス要因だ。米国政府は、これ以上、ドル高を容認することは難しいだろう。経済専門家の間でも、「米国政府の為替政策はドル安に転嫁している」との見方が有力になっている。

ヘッジファンドなど大手投資家が、米国政府の政策展開を見逃すとは考え難い。彼らの投資姿勢は、既にドル安・円高を想定した持ち高に変わりつつある。また、欧州の大手銀行が抱えるシステミックリスクなど、無視できないリスクが高まっている。それだけに投資家のリスク回避の動きが出やすく、円高は進みやすいと見るべきだ。

本来ならドル高が進んでもおかしくない

足許のドル安・円高は、米国の実質金利の上昇圧力の弱さに起因する部分が多い。短期的には、為替相場を動かす最も大きな要因は日米二国間の“実質金利”の差だ。

一般的に、投資資金は、低金利の通貨から高金利の通貨に向かいやすい。多くの投資家は高金利通貨を選考することが多い。その結果、高金利の通貨は低金利の通貨に対して強含み、金利の低い通貨は弱含みとなりやすい。

現在、主要国の表面金利を見ると米国が最も高くなっている。本来であれば、ドル高が進んでもおかしくはない。しかし、通貨の価値の変動=インフレ率を加味した実質ベースの金利を見ると状況は違ってくる。通貨の価値が減少するインフレ懸念が高まる米国よりも、デフレから脱却できない日本の方が高くなっている。そのため、円が買われやすく、ドルが売られやすくなる。

また、2016年上半期、日本の経常収支(海外とのモノやサービスの取引状況を示す)の黒字幅は、10.6兆円と上半期として9年ぶりの水準に達した。経常収支が黒字であるということは、需給面からドル売り・円買いに繋がり易い。日本の企業が、海外からの売上などで得たドルなどの外貨を売り、円を買う可能性が高いからだ。