国際・外交 北朝鮮 韓国
北朝鮮「12人の美女が韓国に亡命」報道への、ぬぐい切れない疑惑
不可解なことばかり
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8月某日、北朝鮮の駐英公使が韓国に亡命、「過去に脱北した北外交官の中では最高位級」として話題になっている。「金正恩体制に嫌気がさした」と、駐英公使の亡命の理由は明確だが、一方で、その4カ月前に起こったミステリアスな「亡命」を巡って、様々な憶測が飛び交っている。

4月上旬、中国浙江省の朝鮮レストランで女性従業員12人が突如消息を絶った。これについて韓国側は「自らの意思」に基づいた「集団脱北」であるとし、北朝鮮側は「集団拉致」だと火花を散らしているのだ。

作られた脱北?

中国浙江省で北朝鮮が運営していた朝鮮レストラン「柳京」で、12人の女性従業員と支配人の男性1人が失踪した事件は、真相が見えぬまま4ヵ月が経過した。この間、南北朝鮮では、「自らの意思のもと集団で脱北した」とする韓国政府と、「集団で誘因拉致された」と訴える北朝鮮とが激しい論争をくりひろげてきた。

なぜ「消息不明」から4ヵ月たった今になってこの原稿を書くのかといえば、いまなお、確たる情報が出てこないからだ。筆者は、事件発生から2~3ヵ月もあれば一定程度信頼できる情報が入ってくると思っていた。が、甘かった。

事件が起きたのは今年4月5日。中国浙江省の朝鮮レストランで働いていた従業員20人のうち、女性従業員12人と支配人の男性(ホ・ガンイル氏)1人、計13人が忽然と姿を消した。

それから3日後の4月8日、韓国統一省は、13人が集団で店を脱出し、7日に韓国に入国したと発表。このときの統一省の説明によれば、女性従業員らは中国で生活するなかでテレビやインターネットに触れ、北朝鮮の虚構を知ったことで集団脱北を決意したという。

統一省の発表にもとづき、韓国や日本のメディアは「これほどの大規模な『脱北』は初めて」(4月9日付『朝日新聞』)などと報じた。

筆者も当時、朝鮮半島問題を主に取材している全国紙記者から「こんな大胆な脱北が可能になるなんて、北もずいぶんと変わったものだ」という話を聞いた。多くのメディア関係者が「集団脱北」と確信していたのだ。

ところが中国に残っていた従業員7人が北朝鮮本国に帰国すると、事態は思わぬ展開を見せる。4月12日、北朝鮮当局は「(支配人のホ・ガンイル氏を除く)女性従業員12人は誘因、拉致された」という談話を発表したのだ。

普通ならば、受け流してもいい「北朝鮮の常套句」である。ところが、韓国の「ハンギョレ新聞」が独自取材に着手したところ、意外な事実が分かった。

レストラン支配人のホ氏が共同経営者と金銭トラブルを抱えていた疑いがあったことを掘り起こした上で、韓国元高官の「無理に『集団脱北』を作り出そうとしたのではないか」というコメントを掲載したのである。(4月12日付『ハンギョレ』)