週刊現代
元人気アナ・魚住りえ「人生の原動力」〜スピーチメソッドが大人気
「羅針盤」となった本10選

希望をくれたアナウンサーの世界

子供の頃の夢はピアニストでした。3歳でピアノを始め練習を重ねてきましたが、自分の才能に限界を感じ、15歳の時、ピアノから離れました。人生の目標を失い、精神的に厳しい日々を送っていた頃、テレビでアナウンサーを見たんです。

それまではピアノ漬けで、テレビを見る暇もあまりない生活でしたから、世の中にはこんな素敵な職業があるのかと驚きました。言葉を音にして伝えるってなんて素敵なんだろうと魅せられたのです。

次はこれを目標にしよう、今度は自分が楽器になろうと決め、高校で放送部に入りました。そこでNHK主催の「全国高校放送コンテスト」を知ったのです。私は朗読部門に出て、全国3位に入賞しました。新しい人生のスタートに立ったような興奮を覚えました。

コンテストで朗読した本が1位に挙げた島崎藤村の『千曲川のスケッチ』。信州小諸の千曲川一帯の農民たちの暮らしを四季の移り変わりとともに描いた写生文で、情景が目に浮かぶように美しい。是非声に出して読んでいただきたい1冊です。

新たな目標を見つけた高校生の頃、灰谷健次郎の『我利馬の船出』を読んで衝撃を受けました。現状に鬱屈し、生まれ変わりたいともがく少年が、一人、ヨットで荒海へと出発する。大いに勇気をもらい、私も広島から大都会・東京への船出を決意しました。

幸運にも、その後、アナウンサーになることができましたが、40歳を迎える頃、人生の後半に向けて新しいチャレンジをしたいという気持ちが湧いてきました。そこで、これまでの経験を基に〈魚住式スピーチメソッド〉を立ち上げたのです。

ピアノを失った私を朗読が救ってくれた時に痛感したのは「何かを手放さなければ、次の道には進めない」ということ。ですからこの時も、事務所から独立し、軌道に乗るまで、ひたすらレッスンやスクールに集中しました。そしてたった一人で会社経営を始めたんです。

そんな私に、尊敬するある経営者が薦めてくださったのが『巨富を築く13の条件』。ナポレオン・ヒルが500名余の発明家や起業家たちにインタビューをして普遍化した“成功の哲学”がまとめられています。

特に役に立っているのは、利益を生むには社会に役立つサービスを発明しなければならないという教え、それから、自分と同じ理想を持つ仲間を見つけて互いにモチベーションを維持し、情熱を持ち続けろという教えなど。経営とは何かを指南する私の教科書です。

高い志を持つ人に惹かれて

ヒルの本が経営の教科書なら、カーネギーの『心を動かす話し方』はスピーチの教科書。メソッドを構築していく際に参考にしました。今でもレッスンや講演の前には必ず読み返します。

この本から学び、肝に銘じているのは「嘘をついてはいけない」。話す内容に嘘があると、必ず相手に伝わるとカーネギーは言うのです。自分が経験したこと、自分が調べたこと、自分が納得したことのみを話し、例えば人から聞いた内容であれば正直にそう言う。真実を話すことが最も相手に伝わる方法だという、言ってみればシンプルなことに、目から鱗が落ちる思いでした。

しかしやはり、テクニックも必要になります。聞き手を楽しませるためにどうしたらよいかなど、すぐに使える技術も満載で、話し方を学びたい人にお薦めの1冊です。

本はジャンルを問わず何でも読みますが、中でも、高い志を持った人の物語には刺激を受け、心を打たれます。

3位に挙げた『それってキセキ』は人気音楽グループGReeeeNの物語。歯科医でもある彼らは素顔を出すことなく音楽活動を続けていて、曲を聞いたことはありましたが、あまり知らなかったんです。この本で、生い立ちから結成秘話、リーダーの方が3・11後に福島で、遺体の身元確認のための検死作業に携わっていたことなどを知り、音楽のみならず人柄にも惹かれました。

著者の小松成美さんは、イチローさんやYOSHIKIさんなどスポーツ選手やアーティストに深く入り込んでインタビューをされてきたノンフィクション作家さん。この本は「小説」という形を取っていますが、変わらぬ温かい文体が心に沁みます。

ゆめのちから』は、国産小麦100%の製パンに挑んだPascoの物語で、日本の農業について考えさせられます。

著者の盛田淳夫さんの原動力は「日本の将来のため」だそう。こういう方々に習い、勉強を重ねて、私はこれからも「スピーチメソッド」を広げていけたらと思っています。

(構成/砂田明子)

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うおずみ・りえ/'72年、大阪府生まれ、広島県育ち。慶應義塾大学卒業後、日本テレビのアナウンサーを経てフリーに。「魚住式スピーチメソッド」を確立。近著に『10歳若返る!話し方のレッスン』