週刊現代 ドクターZ
証券会社にダマされるな!「日銀ETF巨額買い入れ」でも、株価は決して上がりません
ドクターZの結論

こんな額で株価は上昇しない

日銀は8月10日、指数連動型の上場投資信託(ETF)を707億円買い入れた。日銀は7月の金融政策決定会合で、ETFの買い入れ額を従来の年間3・3兆円から同6兆円へ2・7兆円増額する「追加緩和」を決定していたので、さっそくそれを実行に移した形である。

メディアでは日銀がこのように巨額の株式投資をすることによって、株価が押し上げられるとの楽観論が展開されている。しかし、はたしてこれは本当だろうか。

そもそもETFとは、証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指した投資信託のことであり、「Exchange Traded Funds」の頭文字をとってETFと呼ばれている。ETFの代表的な商品として、東証一部の全銘柄の動きを反映した株価指数である東証株価指数(TOPIX)に連動するETFがある。そのETFを日銀が買うというのは、東京証券取引所の一部上場銘柄をすべて買うのと同じことを意味する。

では、一部上場全銘柄の時価総額はいくらかと言えば、6月末で464兆円。日銀による2・7兆円の買い増しというのは、それだけを聞くと「巨額」に感じるだろうが、実は一部上場全銘柄の時価総額のわずか0・6%にすぎない。そんなもので、株価を大きく押し上げられるはずがない。

これまでの統計的な実証分析でも、日銀によるETF購入が日経平均株価を押し上げるという説は完全否定されている。日本株の株価の動きについては、むしろほとんどが米国の株価と為替によって説明ができ、日銀によるETF購入は「影響がない」という統計結果が出ているのだ。

しかし、それでもなお、マスコミでは相変わらず日銀が株価を押し上げるとする報道が止まらない。そのため、プロの経済通には、「日本は景気が良くなっている」という間違った印象まで与えかねないと心配する向きがあるほどだ。

こうした根拠なき楽観論で特に心配すべきことは、「日銀によるETF購入が日経平均株価を押し上げる」というのを当然の前提として、証券会社が顧客に株を勧めていることだ。証券会社の中には、今回の日銀の決定によって、日経平均株価に換算すると1000円以上の株高効果があるとの試算を出すところまである。

〔PHOTO〕gettyimages

もちろん、こうした証券会社やその系列シンクタンクのエコノミストの言うことを信じてはいけない。これはあくまで商売のためのトークであり、顧客にカネを出させるための方便。日銀が買うから株価は上がるということで証券会社の口車にのった顧客は、高値で売りたい投資家の餌食になるだけである。

実は日銀も、自らが行っているETF購入が株価に影響のないことを知っている。もし本当に影響があったら、中央銀行による株価操縦になり、中央銀行の責務を逸脱するのでまずいことになってしまうからだ。実際、今回の金融政策決定に際しては、次回までにこれまでの金融政策を「総括」するとし、本格的な政策は今後に先送りすると正直に言っている。

「本当のこと」を知らないと、一部のメディアや証券会社などが語る営業トークに踊らされてしまうので気をつけたい。

『週刊現代』2016年9月3日号より

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