なぜ日本の大手メディアは、性的マイノリティーの問題にこうも鈍感なのか
一橋大学院生自殺を深く報じたのが、ネットメディアだったことの意味
法科大学院生が学ぶ東キャンパス・マーキュリータワー(一橋大学HPより)

読売は遺族の記者会見を無視

昨年8月、ゲイ(同性愛者)であることを暴露され、心身に支障を来たした25歳の大学院生が自殺した――。

ゲイなど性的マイノリティー(LGBT)に対する差別意識が根強く残る日本で起きた悲劇である。単なる自殺として捉えるのではなく、このような自殺を引き起こした社会的背景を考えれば、大きなニュースとして報じる意義はあるはずだ。

事件の概要は8月5日に司法記者クラブで発表されている。記者クラブに所属するメディアであれば、一から取材をしなくても記者クラブにいるだけでそれなりの記事を書けてしまうのだ。結果はどうだったか。

結論から言えば、大手新聞・テレビなど記者クラブメディアは事件に大きなニュース価値を見いだしているようには見えなかった。例えば全国紙5紙。会見翌日の朝刊(東京本社最終版)を見渡すと、読売は「無視」であり、残る4紙も社会面で事実関係を短く伝えるだけだった。NHKも同様だ。

ストレートニュースとしてきちんと伝えられなかったのならば、コラムを使えばいい。大学院生は周囲に相談していたのになぜ救われなかったのか。自殺を引き起こすほどLGBTが拒絶される社会的要因は何なのか。コラムであればさまざまな視点を提供できる。だが、コラムで事件を取り上げる全国紙はなかった。

自殺した大学院生は一橋大学法科大学院に所属。同性の同級生に恋愛感情を持っていると告白したところ、数ヵ月後に「LINE」上で「お前がゲイであることを隠しておくのはムリだ」とばらされた。その後精神不安定になり、校舎6階から転落して死亡した。

遺族は大変なショックを受けた。NHKによれば、両親は「同級生の理不尽な行動で追い詰められ、大学側もサポートせず放置したことは許せない」として、同級生と大学に対して合計300万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。アウティング(本人の了解なしに性的指向を暴露する行為)が争点の裁判は異例だ。