ドゥンガに学んだサッカー観、そしてチームメートとの埋まらないギャップ
松原良香Vol.14
〔photo〕gettyimages

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ドゥンガに学んだサッカー観

2003年11月、松原良香の所属する『かりゆしFC』はJFL昇格を掛けて、全国地域リーグ決勝大会に駒を進めていた。そして第1リーグ初戦、関西代表の高田FCと対戦、3対1で勝利した。

その夜、ぼくはかりゆしFCが宿泊しているホテルに近い食堂で松原と会うことになった。

赤銅色に日焼けした松原は「全然駄目でしたね」と渋面で試合を振り返った。

サッカーは、足技や体力はもちろんだが、味方の選手の位置を把握して、自分がどうしたプレーを選択するのかという瞬時の判断能力が重要である。かりゆしFCの選手たちは、それが欠けていた。

「このレベル(の相手)だとボールが持てるじゃないですか? だから自分でなんとかしようという気が起きてしまうのかもしれませんね」

意味なくボールを持ちすぎる、あるいは味方と不要なパス交換で、試合のリズムを自らなくしていたのだ。

「サッカーって常にゴールを狙わないといけない。一番シンプルなのは、相手からボールを奪ったら、フォワードに直接パスを繋いで、シュートを打つこと。相手はそれをさせないようにスペースを消してくる。でもうちの選手はゴールではなくて、まずパスを繋ぐこと、ボールを奪われないことを考えている」

松原のこうしたサッカー観は、ジュビロ磐田時代の同僚、ドゥンガの影響だ。

「ドゥンガがボールを奪うと、まずフォワードを見るんです。そして、相手のマークがずれていればパスを出す。一瞬の隙も見逃さない。だからフォワードは彼がボールを持ったら常に準備して、ゴールを狙えるポジショニングを考えていなければならなかった」

ドゥンガは味方選手の動き方を見て、その意図を読み取り、パスを操った。かりゆしFCのほとんどの選手からは、どういう意図で動いているのか、伝わってこないのだと松原は嘆いた。

「ぼくは今までは自分のことだけを考えていれば良かった。でも、今はそういう立場ではない。(監督の加藤)久さんも、そのために自分を取ってくれたのだと思っています。ただ、一人でがみがみ怒っても通じない。いかにチームメイトにやる気を出させるか」

地域リーグには、技術、体力以外の“何か”が足りない選手が多い。Jリーグの選手ならば当然のことが、すっぽり抜け落ちていることもある。その水準まで下りて、かみ砕いて説明しなければならないことに、松原は戸惑っていた。