日本の花火「今そこにある危機」~伝統産業を絶やさぬために立ち上がった老舗企業の挑戦

手をこまねいていては、伝統文化の火が消える

「レコードの針が一瞬で世の中から消えてしまったように、このままでは花火もやがて日本から消えてしまう――そんな危機感を持っています」

こう語るのは、創業86年、花火製造業大手の「オンダ社」の恩田郷子取締役だ。日本の美しき伝統文化・花火が、このまま手をこまねいていると消滅しかねないと警鐘を鳴らす。

昨今、日本の花火市場は縮小する一方だ。日本政策投資銀行東北支店が発表した花火産業に関するリポートによると、全国の花火の市場規模は約200億円となっているが、恩田氏によると「ピーク時からみると、3割程度減少しているのでは」とのことだ。

少子化によって花火を楽しむ子どもたちの数が減っていること、子どもたちの遊び方が多様化していることがその大きな原因。また、環境規制が進み、花火禁止を掲げる公園や施設が増加、花火を楽しむ空間が減っていることも響いており、「手持ち花火で遊んだことがないという親世代も出てきているのではないか」(恩田氏)という。

日本の花火産業を活気づかせたい――。そんな思いから、オンダ社は独自の取り組みを始めている。そのひとつが、新たな花火の開発だ。

「先ほども申し上げた通り、なぜ日本で花火を楽しむ人が減っているのかといえば、やはり環境の変化が大きいのです。いつの頃からか、ロケット花火が″騒音″と見なされるようになったり、手持ち花火の煙が『近所迷惑だ』と言われるようになりました。とはいえ、嘆いていても仕方がありません。新しい環境に対応する企業努力が必要です。そこで、私たちが開発したのが、煙の少ない手持ち花火です」

オンダ社が企画・開発した「煙が少なめ花火」は、特に都市圏で花火を楽しみたい人に向けた製品だ。花火を楽しもうにも、大量の煙が出ると近隣から苦情が出るかもしれない、と気後れしてしまう人は多いだろう。そこで、「煙の少ない花火」を企画・開発したというわけだ。狙いは当たり、売上は発売時から年々伸び、昨年度の売り上げは、2010年比で30倍に達しているという。