「メダルをとっただけで万事うまくいくほど、世の中は甘くない」日本人金メダリスト「全員」のその後【中編】
'68年メキシコシティ~'76年モントリオール
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世の中甘くなかった

'68年のメキシコシティ大会、日本はレスリングで4つの金メダルを獲得。フリースタイルフライ級で優勝したのが中田茂男(70歳)だ。

日本レスリング協会の理事なども務めたが、60歳になる前にそうした職からすべて下りた。

「現役時代、あまりにエネルギーを使いすぎた。五輪で精神もすり減ったし、『このままじゃ、俺は早く死んじまうだろうな』と。思い切ってリタイアして、各地を旅行したり、山に登ってみたり、いろいろ挑戦した。今も毎日、のんびりとした日々を送っています」

フリースタイルバンタム級で、東京大会に続く2つ目の金メダルを獲得したのを機に、引退を決めたのが上武(現姓・小幡)洋次郎(73歳)だ。同年に結婚。妻の実家に婿入りし小幡姓になった。

ミュンヘンで代表チームのコーチ、'76年のモントリオールでは監督を務めた後、妻の実家である旅館の経営に転身。以降30年以上、レスリングと縁のない生活を送った。

「実は2つの金メダルも、たくさんの人に見て喜んでもらえればと思い、出身の群馬県・邑楽町に寄付してしまった」

転機は7年ほど前。事業を息子に譲り時間ができたところに、母校の館林高校からOB会会長就任を依頼された。

「それをきっかけにレスリング部の練習に顔を出したら、いつのまにかコーチとして指導にあたるようになって。なんとか母校を日本一にしたい」