ドロ沼化する出光興産「創業家VS経営陣」和解のための切り札はコレだ
月岡隆・現社長〔PHOTO〕gettyimages

昭和シェル石油との経営統合問題をめぐる、出光興産の経営陣と、創業家で大株主である出光家との対立が泥沼の様相を呈してきた。

創業家が先週水曜日(8月3日)に記者会見、昭和シェル株40万株を創業家名義で取得して、出光経営陣が統合へ向けた事前準備としていた英蘭系石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)からの相対取引による昭和シェル株の取得計画に待ったをかけたと発表したからだ。

報道によると、月岡隆・出光社長は翌4日、亀岡剛・昭和シェル社長を訪ねて対応を協議。あくまでも現在の統合計画の実現を目指して創業家の説得にあたる方針を確認したという。しかし、肝心の創業家側は、「(出光経営陣が昭和シェル株の)取得取りやめを公表するまで協議しない」と態度を硬化させているらしい。

経営陣が進めるM&Aに対して、創業家出身の元社長が私費を投じてストップをかけるというのは異常事態としか言いようがない。いったいなぜ、これほどまで経営陣と創業家の関係がこじれたのか。その原因と打開策を探ってみよう。

TOB回避をめぐる水面下の攻防

元代議士で創業家の代理人を務める浜田卓二郎弁護士が先週の記者会見で、出光と昭和シェルの経営統合に待ったをかけるために利用したと述べたのが、金融商品取引法の規定だ。

すべての株主に平等に株式の売却機会を与えるため、当該企業以外の者が特定の期間内に取引所外取引によって持ち株比率で3分の1を超える大量の株式取得を行う場合には、TOB(株式公開買い付け)の採用が義務付けられている。

出光の場合、昭和シェル株の取得にTOBを採用すると、多くの株主から売却希望が出て、RDS保有株だけを買い取ることが困難になり買収コストが膨らむうえ、手続きコストも嵩む。

そこで出光は、昨年秋、昭和シェルとの経営統合に大筋合意したものの、具体的な統合方法には言及せず、まずは、昭和シェルの経営から撤退する方針を表明していたRDS保有の昭和シェル株を取得する計画だけを明らかにした。この場合、RDSの昭和シェル株の持ち株比率は3分の1スレスレの33.24%のため、TOBの義務は生じないと皮算用していた経緯がある。

これに対して、創業家は4億円弱の資金を投じ、出光昭介氏(創業者の出光佐三氏の長男。出光興産第5代社長で、現在も「出光興産名誉会長」の肩書を持つ)名義で発行済み株式数の0.1%に相当する昭和シェル株を取得した。昭介氏は出光と一体とみなされるというのが、創業家側の主張だ。

この通りだとすると、経営陣の取得予定分を加えた出光の昭和シェル株の持ち株比率は33.34%となり全体の3分の1を超えるため、TOBの実施が避けられなくなる。

ちなみに、経営陣には、善後策として、

①株式の取得方法をTOBに切り替える
②あらかじめ自社株の大規模な第3者割当増資を実施して、創業家の持ち株比率を希薄化する
③取得する昭和シェル株数を減らす

などの手が考えられる。

しかし、前述のようにTOBのコストは大きい。第3者割当増資案も、すべての株主の株主権が希薄化するので、他の多くの一般株主から経営陣に対する反発を招く恐れがある。また、取得株数を減らす案は、保有株すべての売却を希望しているRDSの期待にそえない。

つまりどの案にも問題があり、結果として、経営統合そのものが非常に難しくなった格好なのである。

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