イングランド銀行「7年ぶりの利下げ」に隠されたメッセージとは
近づく金融政策の限界
〔photo〕gettyimages

8月4日、英国の中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は、7年ぶりの利下げを実施した。

今回の金融緩和は市場の予想を上回るものであり、強いハト派姿勢を打ち出したといえる。この決定は6月23日の国民投票で予想外にEU離脱が決定し、先行きの景気見通しが悪化したことへの対応だ。

一部では足許の市場の安定を理由に「積極的な緩和は打ち出されない」との見方もあった。しかし、BOEは積極的な緩和姿勢を示すことで、金融市場の信頼を得ることを重視した。この結果、世界の金融政策の緩和度合いは一段と増したと考えられる。

あくまで「予防措置」のようだが…

4日の金融政策決定会合でイングランド銀行は、政策金利の引き下げ(0.5%から0.25%)、国債買い入れ額拡大(3750億ポンドから4350億ポンド)、社債買い入れの開始(100億ポンド)などからなる金融緩和を発表した。特に国債買い入れの増額は市場にサプライズを与え、英金利は急低下し、ポンドは対ドルで1.5%程度急落した。

事前の予想としては、0.25ポイントの利下げは想定されていたものの、多くのエコノミストは今回のような思い切った緩和策が出るとは期待していなかった。世界の株式市場が落ち着いていることも踏まえると、イングランド銀行は先行きの緩和余地を残すために国債の買入れ額は据え置くとの見方が多かった。

しかし、イングランド銀行は積極的な緩和姿勢を打ち出すことで、先行きへの懸念を払拭することを優先した。英国が離脱交渉をEUとどう進めるかは不透明だ。経済にどのような影響が出るかも、実際に交渉が始まらないとわからない。

ここで問題となるのが、先手を打って市場の安心感を支えるか、金融政策の一部を温存するかだ。

実際にリスクが顕在化してから金融を緩和しても、市場が落ち着くとは限らない。金融緩和の内容が市場の期待を下回れば、市場が失望し混乱に拍車がかかる恐れもある。ひとたび市場参加者が中央銀行の政策に不信感を持ち始めると、市場とのコミュニケーションは容易ではなくなる。

そこで、BOEは先んじて積極的な緩和を実行し、目先の市場センチメントの悪化を防ぐことを優先した。決定後の会見でカーニー総裁は「すべての政策には拡大の余地がある」とハト派姿勢を鮮明に打ち出した。これは、市場参加者の安心感を支え、潜在的なリスクに対する予防的措置といえる。

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