日本の農業が抱える「不都合な真実」〜“既得権益化”がさらなる衰退を招いている
農「家」からの解放を!
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文/貞包英之(山形大学准教授)

「地方で農業が身近」という誤解

地方都市を知らない者が抱く初歩的な誤解として、「農業がかならずしも身近ではない」ことがある。

実際、筆者は通算で20年以上、地方都市で暮らしているが、農業について実践的に知ることは少ない。時代のせいかもしれないが、今の大都市の子どもたちが農業体験などで田植えや稲刈りに参加する機会が多いのに対し、筆者はそうしたものにほとんど触れた記憶はない。

筆者だけではないだろう。地方都市の暮らしにおいて、農業はますます疎遠になっている。

ひとつには、農業の規模がますます縮小しているためである。たしかに景観としてみるとき、水田の広がりはなお大きく、地方都市を四方から取り囲んでいる。

しかし産業規模としてみれば、近年、農業は衰退している。全国的には、農業に従事し稼いだ者(販売農家の農業従事者と常雇・臨時雇いの雇用労働者)は2015年には507万6000人と5年前に比べ180万人近く減り(農林業センサス)、また農業総産出額も2014年には8兆3639億円と、これも5年前と比べれば2425億円減少している(生産農業所得統計)。

これは地方都市でも同じである。筆者の住む山形市でも、サクランボなどの特産物のイメージが強いが、農業に携わる人は実は少ない。

2015年には総農家数3670戸、そのうち農業で収益を挙げているとみなせる販売農家は2054戸で(農林業センサス)、同年の国勢調査を基準とすれば全体の世帯数の2.0%に留まる。

そのせいで生産額も低迷し、農業を地方都市の少なくとも主要産業として考えることは難しくなっている。

たとえば2013年の山形市で農業の総生産は85億円で全体の0.9%に留まり、数字を単純に比較すれば、市の主要産業は農業以上に、郊外のロードサイドやショピングモールで成長が著しいサービス業(2034億円、全体の22.3%)だといわざるをえない(山形県「市町村民経済計算」)。