週刊現代 企業・経営
「メニコン」驚異のV字回復の真相〜二代目社長が語る「私の経営哲学」
非常識の中にこそ戦略がある

戦後、眼鏡店に勤める若者が「米国には眼に入れるレンズがある」と知り独力で開発に挑んだ。使った素材は戦闘機の風防ガラスに使われていたアクリル樹脂。青年は試作品が完成した時「眼は2つある。1つつぶれても支障はない」と装着した―これが日本製コンタクトレンズ誕生の瞬間だ。

名古屋に本拠を置くメニコンは、この勇気ある青年・田中恭一氏が創業した企業。恭一氏の子息である田中英成社長(56歳)に聞いた。

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「非常識の中にこそ戦略がある」

メニコン 田中英成社長

画期的!

父も私も「非常識の中にこそ戦略がある」と考えています。

当社は'90年から再生医療に取り組んでいました。コンタクトレンズで培った細胞レベルの研究の知見を生かし、重いやけどを負った方の皮膚の再生を目指したのです。

結局、医療に関する法整備が追いつかず事業化を断念し、特別損失を計上しました。

しかし今は、生殖補助医療を扱うライフサイエンス事業をスタートし、不妊治療の画期的な技術を研究しています。運動能力が高い精子とほかの精子を分離すれば、よい精子だけを生殖に使えます。難易度は高い。でも大部分の人が賛成する常識的なことばかりしていては、会社の未来はありません。

印籠

父に「勉強しろ」と言われたことは一度もありません。だから中学校の成績はクラス45人中30番台。高校時代は生徒会の活動に明け暮れました。

入学時、男女共学校に入ったと思ったら教室も校舎も別で愕然としたので(笑)、生徒会に入り「共学にすれば、異性の目もあって素行がよくなるはず」と訴えたのです。

この過程で学んだのは、企画力とは、すなわち人を説得する力だということ。説得するプロセスの中に、感動を呼ぶポイントを設定し、事前に落としどころも考えておく。水戸黄門の印籠のように、絶妙のタイミングで本気度や誠意を訴えることも大切です。

高校では「行事を男女共同に」といった多くの提案を通せました。ただこのため、医学部入学に際して随分長く浪人しましたが(苦笑)。

夜も寝ず

当社店舗併設の眼科院長になった時です。ある日「コンタクトをつけて目が傷だらけになった!」と怒り心頭のお客様が来ました。

ところが、レンズを確認すると他社製品。聞けば、量販店で「メニコン下さい」と言ったら「同じようなレンズがある」と他社の安いレンズを売られたらしいのです。また、使用に関しての適切な説明も省かれていました。

その後、同様の例が増え、対策も難しい。夜も眠れないほど悩みました。ですがある会議の時、「キャッシュフローを逆にする」と言う誰かの声がふと聞こえたのです。別の議題で話していたのですが「これだ!」とひらめいた。

従来は販売店に商品を卸し、そこから代金をいただいていました。その時考え付いたのは、当社が顧客から月会費をいただき、商品を提供するという案でした。販売店には、サービス提供の手数料を支払います。

この形なら、間違いなく当社製品が適切な説明とともに届きますよね。これが業界初の定額制「メルスプラン」誕生のきっかけ。「考え続ければ何とかなる」と思ったものです。

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