日銀は本当に死んだのか? デフレ脱却に必要な緩和スキームは「量」の拡大だ
「名目GDP600兆円」に向けて
〔PHOTO〕gettyimages

今回は残念。次回に期待

7月28、29日の日銀の金融政策決定会合では、ETFの買い取り枠拡大(従来の3.3兆円から6兆円へ)が決定されたが、マネタリーベースの拡大ペースは年間約80兆円で据え置かれた。

1月29日のマイナス金利政策の導入以降、長期金利(国債利回り)の低下が著しく、日銀の想定を下回る水準で推移しているとされることから、ETFを追加で買い増す分は国債購入の減額で対応し、年間のマネタリーベース拡大ペースは現状を維持するというメッセージである可能性が高い。

これは、金利低下で「ポートフォリオリバランス効果」が著しく低下した国債買いオペを株式の購入で代替したという意味で、「質」的緩和の拡大といえなくもない。だが、それでも結果は期待はずれであった。

特に、筆者が当コラムで言及したように、今回の「質」的緩和では、「量的緩和政策の限界≒金融政策の限界」とみなし、「円買いプレイ」を積極的に仕掛けてきた海外投資家の見方を変えるには至らず、しばらくおさまっていた「円買いプレイ」が再開されてしまった点は痛い。ドル円レートは1ドル=100円台を試す展開である。

筆者は、今回、追加緩和を行うのであれば、「質」よりも、むしろ、「量(この場合、マネタリーベースの増加ペースの拡大)」にこだわるべきであったと考える。その意味で今回は残念だったが、黒田日銀総裁の記者会見の内容から予想する限り、次回(9月20、21日)の金融政策決定会合では、インパクトのある追加緩和措置がとられそうなので、そちらに期待したいところである。

ところで、今回の決定に関して、「マイナス金利付き量的質的緩和(QQE)」政策に否定的な識者は、「日銀は死んだ」として、「金融政策限界論」をことさら強調している。一方、QQE政策に賛成していた識者は、3月以降の日銀の追加緩和に消極的な姿勢を「白川総裁時代の旧態依然とした日銀に戻りつつある」として強く批判している。

筆者は、日銀が「デフレ脱却(インフレ目標)の達成に注力する」というスタンスを明確にしたいのであれば、マーケットの変動に対処する形での追加緩和を実施する必要はないと考える。そして、重要なのは、むしろ、消費税率引き上げ後の景気失速によって頓挫した「デフレ脱却」へのコミットメントをもう一度明確にした上で、その新たなコミットメントと整合的な追加緩和スキームを提示することであると考える。

その意味で、2014年10月の「ハロウィン緩和」と今年1月のマイナス金利導入は、いかにもマーケットの短期的な動き(特に為替レート)に対応したような印象がぬぐえないこと、及び、今回の措置も、いかにも経済対策の発表にあわせた場当たり的な印象がぬぐえないことが、世の中の人々に余計な誤解を与え、期待形成にマイナスの影響をもたらしているのではないかと懸念する。

そして、それが、前述のような「円買いプレイ」を誘発させ、「余計な円高」を招いているのではないかと考えている。従って、1月のマイナス金利政策と今回の追加緩和はむしろ、やらないほうが良かったのではないかと考えている。

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