VR エンタメ
人格は外見に支配されている!? VRが揺さぶる私たちの固定観念
コヤ所長インタビュー(3)

VR=ヴァーチャル・リアリティ。古くからあるこの技術が、いま大注目を集めている。いったいなぜか? VRは私たちをどこへ連れて行くのか?

期間限定でお台場で開催されている「VR ZONE」でこの技術を体験し、大いに取り乱した作家・海猫沢めろんさんが、開発者である(株)バンダイナムコエンターテインメントのコヤ所長に、「VRの核心」を聞いた。【第3回】(→第1回はこちら

お台場のVR ZONEにて「スキーロデオ」を楽しむ海猫沢めろんさん

人間の「ニーズ」をつかむ

——「VR ZONE」の裏側について聞きたいんですが、行ってみて、工夫してるなと思ったのは、人の心理をうまく突いてるところなんです。

例えば、「脱出病棟Ω(オメガ)」では、車椅子で移動する、懐中電灯で暗がりを照らす、という2つの要素があります。これによって動きの自由度が限定されるし、視線も一点に誘導される。結果、ものすごいドキドキするんですよ。心理学とか、認知行動科学みたいなものは取り入れてるんでしょうか?

コヤ 「エンターテイメントで人が科学的にどう感じるか」という心理学は大事にしています。

あとは、人間の消費行動、なぜ買うのか、そのおもしろさはどういうことなのかということを考えてます。その点で、マーケティングの梅澤伸嘉先生の話は勉強になりますよ。梅澤先生は人間の消費行動についての心理学の専門家なので、人間がどうおもしろくなって、どう感じるかというのを研究しているんです。ぼくは毎月先生のところに通って勉強していたんです。

——それはゲームに使われてますか?

コヤ はい、そのニーズをもとに、開発しています。

——その部分を意識しているかどうかで、かなり作り方も変わってきそう……これはものづくり全般に関わる考え方でしょうね。

 

人格が変わっちゃう!?

——VRをこのままやっていったときに、コンテンツ産業としてはものすごい発達すると思っているんですけど、他にも使いどころがあるんじゃないかと思うんです。というのは、最近、『いずれ老いていく僕たちを100年活躍させるための先端VRガイド』という本の書評を頼まれたんですけど……。

コヤ 廣瀬通孝先生じゃないですか! 東大の先生ですよね。

——はい。

コヤ 「戦場の絆」を開発するときに廣瀬先生に来ていただいて、酔いの問題についてアドバイスしてもらいました。

——この本、おもしろくて、タイトルはすごい長いんですけど、VRを使って高齢者問題を解決するという本なんです。つまり、VRってエンタメのコンテンツはたくさんあるけど、実は社会問題を解決する方向にも使えるよと言っている。

コヤ 読んでみたい。

——VRだと身体性がどんどんいらなくなっちゃうから、老人もバーチャル空間であれば同じように働ける、そうやって雇用をつくっていこうと。SFじゃなくて、実際に「高齢者クラウド」というのをJSTやNHKと一緒にやっているみたいで、これはなかなかすごいんですよ。だから、ゆくゆくはバンナムでもエンタメじゃない方向というのもあるのかなと思ったんですけど。

コヤ 自分がいま考えているのは、スポーツをふくめたVRによる「代替市場」をつくることなんですが、それもエンターテイメントの範疇ですよね。ただ、開発中にちょっと面白い実験をしたんです。

——どんな実験ですか?

コヤ オキュラスのトイボックスというソフトがあるんですが、それがあまりに面白かったんです。

まず、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)をつけるとVR空間上で、空中に、目と鼻と拍子木(コントローラ)しか見えなくなるんです。それで通信して、お互いが見えるようにした。そうしたらスゲーおもしろいんですよ!

実験を説明するコヤ所長

——なにがおもしろいのか全然わからないんですけど(笑)

コヤ わからないですよね!

VR空間内で自分の姿は適当に抽象化されています。で、別の離れた部屋で同じくHMDをつけた人と、VR空間内で会えるわけです。おたがいマイクで喋れるんですけど、なぜだか「イェーイ!」とかできるんですよ。

——イエーイ??

コヤ プログラマーはだいたい気難しくて、無口なタイプが多いんです。でも、プログラマーにこのHMDをかぶせて、さらにボタンでVR空間内の自分を小さくしたり、大きくしたりできるようにしたんです。そうすると、プログラマーも「イェーイ!」とか言い出すんです。大きい声で歌を歌い出したり、踊ってみたり。

——それは不思議だ……。

コヤ つまり、ぼくらは普段から自分の姿とか声とか性別に支配されてたんじゃないかと。年齢をふくめて、外見にかなり囚われてるんだなと。

——なるほど!