全米プロ最終日、地味なジミー・ウォーカーの「長い長い12時間」
苦節16年、メジャー初制覇への道のり
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文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

雷雨中断に見舞われ、不規則進行となった全米プロゴルフ選手権の最終日。上位選手たちは1日で36ホールを回るタフな日曜日を迎えていた。

第3ラウンドが始まったのは早朝7時。そして、第4ラウンドが終わったときは、すでに午後7時を回っていた。長い長い12時間は、雨上がりに気温が上がり、蒸し暑さとの戦いになった。

第3ラウンドを回り終えたら、組み替えせずに、そのままの顔合わせで最終ラウンドへ突入。途中までは第3ラウンドと第4ラウンドがオーバーラップしながら進むため、選手たちは自分の前後の組の誰がスコアを伸ばして飛び出し、誰が落ちていっているのか、他選手の動きもよくわからない混沌とした中でのプレーになった。

そんな中、初日からリーダーボードの最上段に居座っていたジミー・ウォーカーの立ち位置だけは一貫して動かなかった。

そのすぐ下には、前年の覇者で世界ナンバー1のジェイソン・デイ、2週前の全英オープンを制したばかりのヘンリック・ステンソン、さらにはマーチン・カイマー、パトリック・リード、新鋭エミリアーノ・グリロといった選手たちがウォーカーに迫っていたが、最後の最後はウォーカーとデイ、2人の戦いに絞られた。

「伏兵の優勝」でないことの意義

振り返れば、今大会の開幕前からデイは優勝候補の筆頭だった。ディフェンディングチャンピオンで世界ナンバー1ゆえ、デイが優勝候補に挙げられることは当然と言えば当然。

しかし練習日に夫婦揃って出席したチャンピオンズディナーで口にしたものに愛妻エリーがアレルギー反応を起こし、深夜まで病院に付き添ったデイはバルタスロールの練習ラウンドをたった1ラウンドしか回ることができなかった。

「かえって力みが抜けていい」

遭遇してしまったハプニングを味方に変えるプラス思考。それは幼少時代から寂しさと貧しさを乗り越え、世界の頂点までのし上がってきたデイならではの持ち味であり、武器でもあった。

そんなデイが首位を走っていたウォーカーに大詰めでにじり寄ったとき、デイに分があると感じた人は多かったはずだ。メジャー未勝利のウォーカーには多大なるプレッシャーがかかり、崩れるのではないか。最後の最後はデイが逆転優勝するのではないか――。

そんな大方の見方を覆し、デイを1打差で抑え込んで勝利を手に入れたウォーカー。それが「伏兵のラッキー優勝」とは言われず、「ウォーカーは勝つべくして勝った」と誰もが頷いたことが、現在のゴルフ界の層の厚さを象徴していたように思う。