「113万体」世界に眠る戦没者の遺骨をどうするのかという、この国の宿題
日米激戦の舞台となった硫黄島【PHOTO】gettyimages

世界各地に眠る戦没者の遺骨、その数113万体。すべての遺骨を収容することは不可能だろうが、一人でも多くの遺族にそれを引き渡すことが、国家の責務ではないだろうか。『戦後補償裁判』『遺骨』の著者・栗原俊雄氏(毎日新聞)の特別レポート第三弾――。

やって来ましたこの季節、マスコミが1年で一番、戦争に関する報道をする8月です。「今年はあんまりみないぞ」というあなた、その通りです。昨年の戦後70年で各社たくさん報道した反動か、はたまた今年はオリンピックや選挙の取材で忙しいのか、各社あんまり積極的ではないかもしれません。

しかし1年中8月ジャーナリズムの旗を高く掲げ、常夏記者と呼ばれる私は、相変わらず戦争の記事を書こうと思います。「昔の戦争じゃなくて、イスラム国とか今の戦争を報道しろよ」という声が聞こえました。いえいえ、そういう報道は各社のエース記者がやっていて、常夏記者はお呼びではありません。だいたい語学は板橋弁しかしゃべれません。大きな選挙の泡沫候補のように、独自の戦いを続けます。

ま、花札じゃなかったトリンプじゃなかったそれは下着メーカーだ、そうそうあのトランプさんだって、最初は泡沫扱いだったんですから。常夏記者も、この先どうはじけるか分かりません。江戸っ子だってねえ。板橋の生まれよ。

楽観的な終戦構想がすべての元凶

今から75年前の1941年12月、大日本帝国はアメリカやイギリスなど連合国と戦争を始めた。後年「太平洋戦争」と呼ばれるように(近年は「アジア・太平洋戦争」と呼ばれることが多い。保守派は「大東亜戦争」と言う)、主戦場は太平洋だった。つまり、海軍が重要な役割を果たす。

帝国海軍の実力は、軍艦の保有量や国力などからみて世界トップスリーの一角にあった。ほかの二国はアメリカとイギリスだ。つまり帝国海軍は、3強のうちの2強からなる連合軍に立ち向かうことになった。同盟国のナチスドイツ、イタリアは海軍力が弱く、太平洋海域で戦うことはおよそ不可能だった。このことから分かる通り、そもそも勝てるはずのない戦争だった。

秀才ぞろいの帝国陸海軍、政府もそのことは分かっていた。ではどのような終戦構想を持っていたのか。それは(1)ドイツがイギリスを屈服させる(2)アメリカが戦意を失う(3)講和が成立する、というものであった。

1939年の大戦勃発以来、ドイツは快進撃を続け、スペインなど中立国を除く欧州全体を手中に納める勢いだった。イギリスはその欧州大陸から本土に追い落とされ、独空軍の激しい空襲を浮けた。風前の灯火、のようにみえた。

だが、ドイツの海軍力ではイギリス上陸を成功させるのは難しかった。つまり大日本帝国の終戦構想は最初から危うかったのだ。また、かりにイギリスが降伏したとしても、アメリカが戦争をやめる保障はない。帝国は願望の上に願望を重ねた構想で戦争を始めたのだ。

蜃気楼のような構想の結果、帝国は惨敗した。日本人だけで310万人が死んだ(厚生労働省の推計)。