学校・教育 アメリカ 格差・貧困
アメリカが認めた「教育危機」の内実~はたして万能薬はあるのか
現政権の「改革」に評価を下してみると…
〔PHOTO〕gettyimages


文/北野秋男(日本大学教授)

アメリカの悲願、オバマの悲願

「教育は絶対に必要である」
「努力をし、学び続けること」

この言葉は、大統領となったバラク・オバマが教育演説において児童生徒に向かって熱く語りかけたものである。その様子は、まさにオバマ自身の人生哲学を反映したものであり、教育の再生こそが米国の国家的再生を生み出す原動力とする信念の表明であった。

現政権が目指した国家とは、市場原理主義とは異なる環境国家、福祉国家、教育国家であり、「エネルギー」「科学技術」「教育」は米国の競争力回復にとって最も重要な政治課題であった。

オバマ政権の具体的な教育改革の柱は、「NCLB法(どの子も置き去りにしない法)の改正」「0~5歳児の早期教育の拡充」「優秀教員の採用」「4年制大学での学費控除」「高等教育の拡充・強化策」などであり、巨額の政府投資をもって米国教育の再生と新たな挑戦を目指したと言える。

しかしながら、オバマ個人の成功と国民全体の教育や教育改革の問題は同列ではない。教育問題とは、その国の長年にわたって構築された社会構造を反映する問題である。たとえ教育環境の改善に巨額の投資をおこない、児童生徒を励まし、学校や教員を改革しても、その成果は簡単には表面化しない。

戦後の米国教育改革は、一貫して学力低下や教育格差の解消を目指すものであったが、「未解決の問題」として今日も残存したままである。

「Yes We Can」「Change」――プラグマテックな行動原理を信条とするオバマの挑戦は、米国が歴史的に抱える社会構造問題との対決であり、変革であったが、同時に1990年代以降のブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)と続く歴代の大統領が掲げてきた「格差是正」や「学力向上」を目指した教育改革と同じ路線上にもあった。

1990年代以降の民主・共和両党における教育政策は、1980年代までのような明確な違いはなく、超党派的な様相を帯びている。オバマもまた歴代政権と同様に連邦政府主導による教育改革を継承し、教育における競争と結果を重視するアカウンタビリティ政策を打ち出す。