それでも日本人はまた戦艦「大和」をつくるだろう〜この国が抱える根本的な宿痾
誰もグランドデザインを描けない…
©三田紀房

時は1933年。日本海軍の中枢・海軍省で立ち上がった超巨大戦艦「大和」建造計画。これに対し、1人の天才数学者が"頭脳"で立ち向かう――!!

『ドラゴン桜』『インベスターZ』の作者・三田紀房氏が描く日本海軍エンターテイメント『アルキメデスの大戦』現在、週刊ヤングマガジンにて人気連載中だ。

単行本第3巻発売に際して、著者の三田紀房氏と戦艦「大和」の模型(全長26.3メートル)が展示されていることで有名な呉市海軍歴史科学館(通称:大和ミュージアム)の館長・戸高一成氏とのスペシャル対談を公開する。

戦艦「大和」は必要だったのか

三田紀房(以下、三田) まず、以前から『アルキメデスの大戦』を読んでいただいていたと聞きまして、ありがとうございます。

戸高一成「大和ミュージアム」館長(以下、戸高) うちの若い職員が「館長、面白い本ありますよ」と持ってきたのが『アルキメデスの大戦』でした。読んでみて確かに面白いと思いました。今までの海軍物・軍艦物と、およそ隔絶した切り口ですね。

海軍とは、陸軍以上に計算だけで成り立っている組織。もう理屈だけ。理屈が通らなければ何も動かない。そういう海軍の新たな一面を見させる作品だな、と。三田先生は、なぜ『アルキメデスの大戦』を描こうと思ったのですか?

三田 この漫画を描こうとしたきっかけは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場建設計画で、当初は1300億円だった総工費が3000億円を超えることになったことへの疑問でした。

なぜそうなったのか? を考えているうちに、ふと戦艦「大和」が思い浮かんだんですね。建造費1億4503万円、当時の国家予算の4.4%もの巨費を投じて造られた戦艦「大和」が。

──お二方にズバリお聞きします! 戦艦「大和」は必要だったのでしょうか?

戸高 いきなり超ベタな質問ですね(笑)。基本コンセプトの第一番は、いるか、いらないか、なんですが、当時の海軍の編制上、新戦艦は必要でした。1922年のワシントン海軍軍縮条約以来、10年以上、戦艦を造っておらず、技術の進歩や世界状況の変化などを鑑みても新戦艦は必須だった。

しかし「大和」ほどの巨艦が必要だったかは判断が難しい。でも当時の日本は貧乏だったので財政的に米国に匹敵する戦艦群を建造することは不可能だった。なにしろ米国は太平洋戦争中に8隻も戦艦を建造してくる。ですから数で勝る米国の戦艦に、「絶対に負けない」戦艦を造らねばならなかった。

勝ったり負けたりの五分五分ではダメ。勝ったり勝ったりじゃないと、もう日本には後がない。あと私の「大和ミュージアム」館長という立場上、いらないとは言えませんよ(笑)

三田 僕は、日本では必要か、必要じゃないかって議論しないと思うんです。造りたいか、造りたくないか、造れるか、造れないかだと思うんです。新国立競技場も必要か、必要じゃないかという議論は、どっか行っちゃって、造りたい人と、やめとけって人の、ぶつかり合いになっちゃってる。

僕は、この『アルキメデスの大戦』で造る側のキャラクターを描いていて、それを否定する櫂を主人公にしています。でも、もし軍艦の造船官になって戦艦を造れる、って立場になったら、自分がどれだけの物を造れるのか、力を試したい、挑戦してみたい、と思っちゃう派ですね。

国家予算でそんなものを、と批判する人の気持ちももちろんわかるけれど、自分が「大和」の造船官なら、世界最強の巨大戦艦を造るんだ、って気持ちが勝つと思う。