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山崎拓がいま明かす、「小泉純一郎総理誕生秘録」
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「私は議員になってからずっと、衆議院手帖に首相をはじめ閣僚らと交わした会話、相手の様子などを細かく要領筆記していた。これらのほぼ正確な事実は、同時に近現代政治における生の資料になると考え、ここに『秘録』として公開することにした」

当選12回。自民党政調会長、幹事長、副総裁などを歴任した重鎮・山崎拓氏が、その歩みを記した『YKK秘録』が発売された。YKK誕生の舞台裏、加藤の乱の真実があますところなく綴られたこの書の中から、小泉純一郎総理誕生秘話に触れた部分を公開する――。

変人宰相の圧勝劇

2001年3月13日13時、日本武道館で行われた自民党大会。古賀誠幹事長から党情報告が行われ、「危機感をもって党再生に取り組む」と述べたが、森喜朗総裁は、「前倒し総裁選挙を行う」と述べ、事実上の退陣表明が行われた。

直ちにポスト森の動きが始まった。経世会(平成研究会)は、森後継に野中広務を推す動きも見られたが、橋本龍太郎元首相を推す動きが主流となりつつあった。

明くる日の18時30分、私は議員会館の田中眞紀子の部屋を訪ねた。小泉純一郎擁立に助勢を頼むと、思いがけなく「大賛成」とのことだった。

21日、早くも「ポスト森に小泉氏意欲」というニュースが出始める。翌日、私は近未来政治研究会総会を開き、「昨秋は加藤の乱で迷惑をお掛けする結果になったが、党再生のために思い切った行動を取るのでもう一度ついて来てもらいたい。新総裁に、今度は小泉純一郎を推したい」と言った。一同粛然として反対の声はなかった。

26日、氏家齊一郎氏の仲介で中曽根康弘元首相とお会いした。場所は日本テレビ本社「四阿」だ。中曽根元首相の話は、列挙するとこうだった。

一、自民党は空前の危機に直面している。公明党と連立しておかしくなった。目の覚めるようなオペレーションが必要だ。
二、森首相は辞めると肚が決まってから、総理らしい風格が出てきた。上野公成官房副長官を通じ、アーミテージレポートを読むようにアドバイスした。
三、自民党総裁選は、小泉純一郎君が出るか出ないかが焦点。野中広務君はたぶん出ないだろう。子分がいない。

四、その点、青木幹雄君は顔に深みがある。則天去私の心境のようだ。
五、日本の総理大臣は代わり過ぎる。昭和9年から16年にかけて8人も総理大臣が代わったことがある。その時は支那事変をめぐって対立が生じた。その時と比べると、今の政権交代劇は原因が軽い感じだ。

このことについて私から、「三角大福中はレベルが高く責任感が強かった」と発言したところ、中曽根元首相の答えはこうだった。

六、われわれの世代は戦争経験を持っている。国家が体中に入っている。だから責任感がある。