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グーグルの基礎研究所「X」が講じた奇策~成果を出すためにこんなことまで!?
「ムーン・ショット」プロジェクトの難しさ
〔PHOTO〕gettyimages

次なるビッグ・アイディアを、実利を産むビジネスに育て上げるにはどうすればいいのか――検索と広告事業からの脱皮を図ろうとするグーグルが、悩み、試行錯誤する様子がこの程、明らかになった。

●“They Promised Us Jet Packs. They Promised the Bosses Profit. The New York Times, JULY 23, 2016

「X」の成績

グーグルは今から約1年前に大規模な組織改革を断行し、持ち株会社アルファベットの傘下に(元々の本業とも言える「検索と広告」事業を営む)グーグルをはじめ多数の企業を抱える、企業複合体へと生まれ変わった。

それら傘下企業の中でも、特に大きな期待を集めていたのが「X」だ。この組織は元々、2010年にグーグル(当時)の基礎研究部門「グーグルX」として立ち上げられ、昨年の組織改編に伴いアルファベット傘下の一企業「X」となった。その役割は単なる基礎研究というより、そこで生まれた数々の研究成果を実ビジネスへと育て上げ、最終的には分社化させることにある。

が、これまでのところ、その成績は思わしくない。たとえばAR(拡張現実)用に開発された「グーグル・グラス」、スマート・ホーム技術を提供する「ネスト」、さらには(2013年に買収した)「ボストン・ダイナミクス」をはじめとする次世代ロボット開発など、これまでXが手掛けた数々のプロジェクトは、いずれもビジネス化以前に暗礁に乗り上げ、プロジェクトの大幅縮小へと追い込まれた。

これらは、いわゆる「ムーン・ショット(月ロケットの打ち上げ)」と呼ばれるSF的なプロジェクトで、そうそう簡単にビジネス化できないことは、当初から誰の目にも明らかだった。また、いずれもグーグル本来の検索・広告ビジネスとは全く異なる分野である。

グーグルの「X」研究所〔PHOTO〕gettyimages

冒頭のNYT記事によれば、(検索・広告事業に特化した現在の)グーグルにも独自の研究開発部門があるので、Xにはむしろ、そうしたグーグルとは別個の研究開発が求められているという。

それはXの人員構成にも如実に反映されている。(検索・広告の)グーグル社員の大半はソフトウエア技術者だが、Xの社員にはソフト技術者は少ない。むしろ「数学」、「物理」、「化学」、「デザイン」、「ファッション」、さらには「公衆芸術」など、ソフト開発やエンジニアリング(工学)とは異なる分野の専門家が大半を占めている。

彼らのような(一般のIT企業にとっては、言わば)異端者が提案する、ときに奇想天外なアイディアをビジネス化するのは並大抵のことではない。またグーグル(公式にはアルファベット)株主からの突き上げもあって、コスト削減の要求も日増しに強くなっている。

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