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ヒラリーとトランプ、「副大統領候補」選びの思惑【現地レポート】
なぜ「無名で地味」な人物に落ち着いたか
ヒラリーと副大統領候補となったティム・ケーン上院議員〔photo〕gettyimages

渡辺将人(北海道大学准教授)

「地味」な副大統領候補

7月25日に民主党大会が開幕した。4日間の日程の最終日にヒラリー・クリントンの指名受諾演説が行われる。

これに先立ち、共和党大会のトランプ演説の翌日、ヒラリー陣営は副大統領候補(ティム・ケーン上院議員)を発表した。

党大会の「後攻」側は、副大統領候補の発表を「先攻」側の党大会中、あるいはその直後にぶつけて、指名受諾演説の報道を台無しにさせる作戦が常道だ。ヒラリー陣営もそのセオリーに従った。

だが、ケーン上院議員と聞いて名前だけでピンとくる人は、ほとんどいないのではないだろうか。国際的な知名度の低さでは、共和党の副大統領候補マイク・ペンス(インディアナ州知事)も似たり寄ったりだ。決して「エキサイティング」な候補ではない、極めて「安全策」な選択である。

ヒラリー陣営の思惑はどこにあるのか。

筆者は今月現地入りし、共和党・民主党大会から現地報告を行っているが、今回は民主党大会が開かれるペンシルベニア州フィラデルフィアから報告する。

* * *

2008年に「後攻」だった共和党マケイン陣営が、副大統領候補を発表したのも、オバマの指名受諾演説の翌日だった。あるオバマ陣営の元幹部はこう回顧する。

「(オバマ陣営を率いていた)ディビッド・アクセルロッドからすぐ電話があって、サラ・ペイリンて、誰? と聞かれたのです」

冗談ではなかった。アメリカ人でも50州の知事が言える人は少ないが、政治のプロでも同様だ。民主党にとって、アラスカ州の女性知事は完全にノーマーク、「レーダー外」の選択肢だった。

2008年、共和党マケイン陣営の副大統領候補として旋風を巻き起こしたサラ・ペイリン〔photo〕gettyimages

ペイリンはマケイン陣営の狙い通り「サプライズ」となり、9月中は「ペイリン旋風」が吹き荒れた。というより、米メディアがペイリンのキャラクターを面白がって報道枠を意図的に割いた。「アラスカからロシアが見えます」等々、「迷言」の数々を残したペイリンだが、政策面での知識の無さを露呈して以降、「ペイリン旋風」は急速に萎んだ。

あのときの「サプライズ」に比べれば、今回の共和党のペンスと民主党のケーンは、真逆の展開だ。「レーダー外」ではなかったし、米メディア的にも「旋風」報道で企画が成立する相手ではない。「地味」な2人に落ち着いた。