野球
第138回 広島の躍進を支える中堅選手

 ペナントレースの後半戦が始まり、いよいよ今季の優勝争いに食い込むチームが絞られてきました。開幕前に両リーグの順位を予想しましたが、セ・リーグのペナントレースは、僕の見当違いでした。首位予想の阪神と最下位予想の広島が、実際は全く逆の位置にいます。前半戦を振り返りながら、後半戦の行方を占ってみましょう。
 
7月25日現在、広島は貯金21で2位・巨人に10ゲーム差をつけて首位を独走しています。今季、広島がダントツで強い理由は、点の取りこぼしが少ないからでしょう。1番の田中広輔を筆頭に上位の選手が出塁し、主軸が還すという図式がうまくはまっています。クリーンアップだけでなく、下位にも打てるバッターが揃っているので、必ずチャンスをモノにしている印象があります。広島打線のつながりは予想以上でした。
 
昨季優勝した東京ヤクルトのように、今季の広島は試合を重ねるごとに強くなっています。昨年のオフに前田健太がメジャーに移籍したことで、開幕前はあれだけ先発陣が不安視されていましたが、野村祐輔をはじめ黒田博樹やクリス・ジョンソンは順調に勝ち星を重ねています。先発陣につられるように、リリーフ陣も安定感を増してきました。
 
前半戦を振り返って、投手陣のMVPは野村の名前を挙げます。昨季までの彼は、若干ひ弱なところがありましたが、自己最多タイとなる12勝を挙げてチームのエースとして大活躍しています。ここまでは100点満点の出来と言っていいでしょう。今後は年間通して、彼の力を発揮できるかどうかが見ものです。
 
今季の広島は、菊池涼介と丸佳浩の“キクマルコンビ”が元気であることも非常に大きいです。現在、菊池は打率. 312、丸は打率.283とここまで、昨季を上回る数字を残しています。彼らがチームの中心にいることで、新井貴浩のようなベテラン陣は自分のことだけに専念できますし、鈴木誠也のような若手の躍進にも繋がります。キクマルを中心に、若手・中堅・ベテランとチームの形がうまく成り立っています。広島のようにチームのバランスがとれている球団は他には見当たりません。
 

 セ・4球団によるCS出場権争い

 2位・巨人は、キャプテンの坂本勇人と選手会長の長野久義が活躍しています。ただ彼らに続くような若手がいまひとつ出てきていません。中堅の2人が頑張っているからこそ、チームは2位にいられる状況だと思います。今後、チームが浮上していくためには、中堅を中心に全体的に押し上げを図らなければなりません。
 
東京ヤクルトは、畠山和洋に続き、川端慎吾までもが故障で戦線離脱しました。昨季打撃タイトルを分け合った3人のうち唯一、山田哲人だけが打っているような状況なので、非常に厳しい状態です。
 
最下位の阪神は、もともと、チームの戦力に中堅選手が見当たらないので、金本知憲監督は何とか若手を奮起させようとしていました。経験の浅い若手が打てなくなるのは仕方ありませんが、主力の鳥谷敬とマウロ・ゴメスも不調に陥っています。ベテランと若手で勝負しようとしていた金本監督にとって、これは大きな誤算だったでしょう。
 
このままいけば、セ・リーグは広島がぶっちぎりで優勝です。では、2位以下はどうなるか。3位までに入らなければ、クライマックスシリーズには出場できません。ゲーム差をみると、巨人はこのまま行くと思うので、今後の4球団の競り合いに注目が集まります。しかし、現段階で3位・横浜DeNAに6ゲーム差もある阪神はちょっと苦しいかもしれませんね。
 

 日本ハム大逆転の可能性は!?

 翻って、パ・リーグは僕の予想が概ね当たっています。ペナントレースの見どころは、3位・千葉ロッテがAクラスをキープできるかどうか。そして、福岡ソフトバンクと北海道日本ハムの優勝争いです。
 
ロッテは、7月に今季最多の6連敗を喫するなど、後半戦に入ってから選手に疲れが見え始めています。ロッテの先発陣はリーグ最多タイの10勝を挙げている石川歩に加え、涌井秀章やジェイソン・スタンリッジなど良いピッチャーが揃っていますが、終盤粘れずに失点をするシーンが見受けられます。10日の日本ハム戦は先発のスタンリッジが7回を投げ切れずに降板。リリーフ陣が打ち崩されて、逆転負けを喫しました。
 
これは投手に限らず、野手にも言えることですが、終盤になるにつれて守備のミスが目立つので、そこを改善していかなければなりません。Aクラスを死守するためには、ゲームの終盤がカギになると思います。
 
パ・リーグで最も勢いがあるのは、6月から7月にかけて15連勝した2位・日本ハムでしょう。しかし、あれだけ連勝したにもかかわらず、ソフトバンクとのゲーム差は4.5ゲームもあることに、ソフトバンクの強さを改めて感じます。日本ハムが首位を狙うには、下位チームとの戦いで取りこぼしをしないことが最低条件です。
 
正直、現段階で日本ハムが逆転優勝する可能性はわずかだと思います。しかし、今後のソフトバンクとの直接対決次第では、流れは大きく変わってくるでしょう。そうなれば今季のパ・リーグのペナントレースは、俄然面白くなりそうな予感がします。
 
image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。