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【特別レポート】パナマ文書に出てきた男たちを追え!~国税と大金持ちの終わらない戦い、その内実
南国リゾートの趣溢れる英領ヴァージン諸島。〔PHOTO〕gettyimages

ジャーナリスト 清武英利

富裕層の資産を運用し「カネ守り」とも称されるプライベートバンカー。ペーパーカンパニー作りから逃税策まで指南する男たちを追ったジャーナリスト・清武氏が、身近にも潜む彼らの実態に迫る。

「中国の人たちだよ!」

築48年のその都営アパートは、東京都江東区深川のはずれにあった。

アパートの通路側に色褪せたピンクのタオルが干してあり、ひらひらと風に舞っていた。プラスチックのゴミ箱を通路に出している住人、アパートの玄関で世間話に興じる中年の女性たち、それに涼を求めてドアを開けっぱなしにしている老人世帯もあって、雑多な下町の風景を作っている。

アパートの前で、私はメガネを取り出し、その光景と、手にしたパナマ文書の資料を交互に見入っていた。

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—何かの間違いじゃないのか?西インド諸島にペーパーカンパニーを置く株主が、こんな2DK、37m2の部屋に住んでいるなんて。

しかし、パナマ文書には、それを示す記載が確かにあるのだ。

イギリス領ヴァージン諸島(BVI)に、〝WEAL THY LAND ENTERPRISES LIMITED〟という会社を置く〝Shareholder〟(株主)が、この都営アパート3階に住んでいることになっている。それは、中米パナマの法律事務所、モサック・フォンセカが関与したタックスヘイブン(租税回避地)法人の一つだった。

「WEAL THYLAND」とは、「富める者の地」という意味だろうか。

タックスヘイブンに法人を持つ人物は、六本木ヒルズのようなタワーマンションに住んでいるに違いない—。そんな思い込みが私の中にはあって、「WEAL THYLAND」という社名はいかにも富者の会社らしいが、それとアパートの光景とには、あまりに落差がありすぎた。都営住宅について、東京都住宅供給公社はこんな説明をしている。

〈住宅に困っている収入の少ない方に対し低額な家賃でお貸しする住宅です〉