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将棋ソフトはトップ棋士より本当に強いのか? 羽生・渡辺らがはじめて明かした「本音」
〔photo〕iStock

文/大川慎太郎(将棋観戦記者)

屈辱の瞬間

一切の容赦がなかった。

人間ならば、相手の着手の後は一呼吸置いてから返すものだ。

だが指し手を繰り出すロボットは空気を読めない。山崎隆之が駒から手を離した瞬間、銀色のアームが空を切り裂くような勢いで盤上に駒を置いた。

解説者の深浦康市が「早いなあ」と感嘆の声を上げる。

山崎は頬を膨らませて盤上を見つめている。何かを悟ったような表情で再び駒を持った。着手後は背筋を伸ばし、両手を膝の上に置いた。

解説者のコメントが少なくなり、モニター越しにロボットのアーム音だけが響いていた。

視聴者たちは皆、最後の手続きが行われていることを理解している。

沈黙の中、4八の飛車が2八に動かされて竜に成った。

山崎の背筋がすっと伸びた。表情が映し出される。山崎は悲しげな目をしていた。それは敗北を受け入れた男の目だった。

「負けました」

大きく息を吐いてから、明瞭な声で投了した。

2016年5月22日、「第1期電王戦」第2局。山崎隆之がコンピュータの将棋ソフト「ポナンザ」(ponanza)に2連敗を喫した。

またしても棋士は屈辱にまみれることになった。

山崎は肩を落とし、しばらくうつむいていた。

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