ゴルフ
ステンソンvsミケルソン 全英オープンで死闘を演じた勝者と敗者の不思議な「表情」
〔PHOTO〕gettyimages

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

ロイヤルトゥルーンの最終日の日暮れどき。これから表彰式に臨もうとしていた勝者と敗者が、舞台の袖にあたるやや引っ込んだ一角にたたずみ、“出番”を待っていた。

自身12回目の全英オープンで、ついに勝利を手に入れ、メジャー初優勝を飾ったヘンリック・ステンソン。その隣には2013年に全英オープン初制覇を果たしたフィル・ミケルソン。2人はミュアフィールドの2013年大会で優勝争いを演じ、あのときはミケルソンが勝者、ステンソンが敗者となった。

そんな2人が3年後の今年、再び勝敗を競い合った因縁対決――。

最終日の2人の戦いは、文字通り、手に汗握る死闘だった。そして、最後に3打の差をつけて勝者に輝いたのはステンソン。3年前の勝者ミケルソンは今度は逆に敗者となった。

しかし、そんな過去の経緯もこの日の結果も知らない人が、もしもこのトゥルーンの日暮れどきの表彰式を突然見たら、おそらくミケルソンが勝者でステンソンは敗者だと勘違いしたことだろう。それほど2人の表情は逆さまに見えた。

悲しみや苦しみを噛み締めて戦った4日間

2つ目の全英タイトルを掴み損なったというのに、ミケルソンは爽やかな笑顔を輝かせていた。その横に立つステンソンは、メジャー大会の新記録となる通算20アンダーでメジャー初優勝、全英初制覇、そしてスウエーデン男子選手によるメジャー初優勝を成し遂げたというのに、視線を落とし、悲痛な面持ちだった。

そのときステンソンの胸の中には、勝利の喜びよりも、そこに至るまでのさまざまな出来事が想起され、プロ入り以来、いいときも悪いときも支えてくれた1人の友人に想いを馳せていた。マイクという名の友人は、ここ数年、がんと闘い続けていたそうだ。

「マイクの余命がわずかだと知らされたのは今週水曜。そして翌日の木曜、マイクは他界してしまった。この4日間はマイクがずっとそばにいると感じながら戦った」

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首位で最終日を迎えることになったとき、ステンソンの頭の中にはマイクのこと以外にも、いろんなことが次々に浮かんできたという。

「全英では、これまで2位が1回、3位が2回。そんな過去の結果を意識してしまうことが最終日の僕の最大の障害になると思った」

母国スウエーデンではアニカ・ソレンスタムなど4人の女子選手がメジャー大会を制覇した。しかし、男子はイエスパー・パーネビックもステンソン自身も「メジャーに勝てそうで勝てない」と言われ続けてきた。

「そう言われることに苦悩させられてきた」

悲しみや苦しみ、何度も噛み締めた悔しい想い。そのすべてを抱いて戦ったこの4日間。

「今週は僕の番だと予感していた。僕は勝利した僕自身を心から誇りに思う。そして、この勝利を天国に逝ったマイクに捧げたい」

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