読書人の雑誌『本』 格闘技 日本
日本刀が戦場で「主要な武器」になったことは一度もない! 殺傷率は「投石」以下
知られざる意外な真実
〔photo〕iStock

文/加来耕三(歴史家・作家)

武術と刀剣を研究している加来耕三氏がこの度『刀の日本史』を上梓。日本刀の意外な真実を明かします。

佐々木小次郎「物干竿」のウソ

天下泰平の世上は、日本刀のブームだという。とりわけ女子中高生が、ゲームの影響をうけて刀剣美術館に列をなしているとか。

筆者はこれこそが、日本刀の正常な姿だ、と思う。日本刀はつまるところ、鑑賞のためにしか存在しないのだから。

刀剣女子(?)のみならず、日本刀愛好家の方々に尋ねたい。

侍が腰に差した刀を、どうすれば抜けるか。これはかんたん、鞘走らせれば誰でも抜ける(腕の長さ、腰などチェックポイントはあるが)。

では、どうやって鞘の中に本身(俗にいう真剣のこと)を納刀するのか。鋒(刃物の先端)は切れる。鞘口(その形状から鯉口ともいう)をおそるおそるのぞき込みながら、右腕を前につき出すようにして、刀を納める時代劇などみたことがない。

剣には残心というものがあり、敵を倒したとしても、注意力は前方にむけられていなければならなかった。鞘口をのぞき込んでいては、ふいに倒れた者に斬りつけられるかもしれない。

顔を正面にすえたまま、鞘口をみないで、鋒で手や指、腕を傷つけないように、どうすれば納刀できるのか。

時代劇の場数をふんでいない役者の場合は、鞘に納める途中から映す。チャリン、と音をさせて。

すこしキャリアの積んだ役者ならば、左手の親指と人差し指をつかって鋒を手挟み、棟=峰(刃の反対側の部分)が手前になるように、鞘口から刀身を入れていく。

これならば、前を向いていてもできる。

ただ、本当に修行した手練れは、刀身を汗のついた指でさわったりはしない。後の手入れが、日本刀は大変なのだ。