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崔実(チェシル)がデビュー作『ジニのパズル』に込めた作家としての決意表明
群像新人文学賞受賞
チェ・シル/1985年生まれの作家。2016年、『ジニのパズル』で第59回群像新人文学賞を受賞。同作は第155回芥川賞候補ともなった。


文/崔実(作家)

誰に頼まれた訳でもなく無名の分際で書いた小説を、説明するだとか思い入れを振り返ることは、まず不可能に感じる。『ジニのパズル』を書いていた時はとてもじゃないが冷静ではなかった。それでも出来る限り、このデビュー作と距離を取り、作品が生まれた経緯を書ける範囲で辿ってみようと思う。

私は教室を抜け出すことにした

まずは、小説と同様、幼少期の頃の話からしなければならないだろう。

私は小学生の時から、授業中は勉強以外のことを考えていた。だから、その時も教科書は閉じたまま、物思いに耽っていた。小学二年生の時だ。私はふと皆の机がどうして同じ向きに並んでいるのだろう、と疑問に思った。どうして縦も横も揃え、綺麗に列を作って黒板と向き合わなきゃいけないのだろう、と。私は、何故だか「南」という響きを気に入っていた。だから、机だって南に向けて置きたかった。でも、そんなことが許されるはずはなかった。

私は教室を抜け出すことにした。授業中、先生の目を盗んで床を這い、扉をそっと開けて廊下へ出た。足音を立てないように階段の踊り場まで行くと、校長先生に声を掛けられるまで、そこで昼寝をした。

学校で過ごす時間は、とても長く感じられた。その分、家族と過ごす時間が少なくなり、私は不安になった。このままでは、いつか家族が家族でなくなってしまうのではないか、と。

それから数年経った六年生の時、私の頭の中は更なる疑問で溢れ、週に何度も学校や家で爆発を繰り返すようになっていた。だけど、私が何を考えているかなんて誰も興味がないのだと思っていた。

学校の帰り道、私はふと文房具屋に立ち寄り、作文用紙を買った。家に着くとさっそく紙を広げ、頭の中が真っ白になるまで思いを綴った。用紙はクローゼットの服のあいだに隠した。その頃から、人に相談するという行為を忘れた。代わりに、自問自答を繰り返すようになっていた。そこで私は余計に世の中や大人に対しての怒りや反抗心を募らせていったのだと思う。