週刊現代 テロ アメリカ
戦争とテロの「リアル」を知るために読むべき3冊の本
熊谷達也の読書日記
〔PHOTO〕gettyimages

帰還兵たちの「その後」

イギリスで国民投票があった日、朝のニュースを見た時には、EUへの残留派の票が僅差で離脱派を上回っていた。昼にもう一度ニュースを見た際には逆転して、イギリスのEU離脱が決定していた。その後のテレビのニュースでは、識者と呼ばれる出演者たちが、一様に意外や驚きの言葉を口にしていた。が、今回の投票結果に最も驚き戸惑ったのは、イギリス国民かもしれない。

今後の日本国民やアメリカ国民も、同様の戸惑いを覚える事態にならないことを祈るばかりだ。どのような結果になろうと、民主主義の手続きを踏んで決定されたものである以上、私たちはそれに従わざるを得ないし、従う義務がある。たとえそれが、次の時代を担う若者たちを積極的に戦場に送ることになってもだ。

それにしても、戦争とはどういうものか、為政者たちは本当にわかっているのだろうか。どんなに軍事のハイテク化が進んでも、戦争とは、人を殺すことであり、人に殺されることだ。『帰還兵はなぜ自殺するのか』は、その事実をあらためて私たち読者に突きつける。

本書に主に登場するのは、イラク戦争に従軍した5名の兵士とその家族だ。5名の兵士のうち、1人は戦死している。彼らを中心とする極めて丹念なリサーチの下に書かれた本書は、あらゆる部分で生々しい。現在進行形を用いてドキュメンタリータッチで描かれていることで、いっそう身につまされる。

たとえ生きて故郷に帰ることができても、多くの帰還兵が重い精神的ストレスを抱え、自殺願望に苛まれながら、苦しみの中でかろうじて生きている。抱える苦しみの深刻さは、本人だけでなく家族も同様だ。

本書に登場している帰還兵たちは、その後どうなったのか。今現在、どのような人生を送っているのか。ささやかなものでいい。彼らに少しでも幸運が訪れることを祈りながらページを閉じた。