週刊現代 ライフ
羽生善治45歳「負けることもある、それが人生」密着ロングインタビュー
第一人者に「変化」が起きていた
〔PHOTO〕gettyimages

取材・文/高川武将

年齢はハンデにならない

この春、長く将棋界の王者に君臨してきた羽生善治に、ちょっとした「異変」が起きていた。

3連覇のかかった名人戦第2局の終盤、相手玉の詰みを逃して逆転負けすると、そこから4連敗。28歳の佐藤天彦に名人位を奪われた。他の棋戦でも20代の棋士に負け、自身初の公式戦6連敗を記録してしまう。

25歳で空前絶後の七冠を制覇してから20年。通算勝率は7割1分を超え、45歳の今も三冠王である。40代に入ってから、記憶力や瞬発力の衰えを自覚しながらも大局観や直感を磨くことで、若手の実力者たちの挑戦をことごとく退けて来た。その羽生が、若手の突き上げを食らい始めた。

「対戦した人が強いということがまずありますね。ただ長くやっている中で、自分の感覚がどこか古くなっているとか、遅れているところがあるのかな、と考えさせられてはいます。

将棋は記憶力や瞬発力が全てだとは思っていないんです。今まで培ってきた経験や知識をいかに活かしていくか。でも、今の将棋は過去の知識を活かしにくい。若い人の新たな将棋を深く知り、適応できるようにきめ細かい精度を磨く必要がありますね」

その際、年齢はハンデにならないのだろうか。

「直接的なハンデにはならないと思っていますね。それよりも、将棋以外の仕事が増えてくるので、物理的なハンデはあると思います。この5年で衰えは感じないんです。もちろん、記憶力がよくなったというわけじゃないんですけど(笑)」