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最強の情報参謀が緊急レポート!報道占有率でわかる参院選「無風」の正体
結局、自民勝利の理由はマスゾエだった?

「バブルチャート」で参院選を読み解く

「参院選に関する報道量があまりに少なかった。それが、与党を利することになった」――選挙後、そんな声が噴出している。実際のところはどうだったのか。選挙に関する報道の多寡は、やはり選挙結果に影響するのだろうか。

↑これは「バブルチャート」と呼ばれる図で、1週間のうちに、テレビ報道がどんなテーマを、どのくらいの分量(時間)扱ったかが一目で分かるようになっている。2012年の衆院選や2013年の参院選の際、自民党が活用したデータの一つで、「選挙の情報戦略を立てる上で欠かせないもの」として認識されている。

このバブルチャートの生みの親が、情報分析のコンサルティングを手掛ける株式会社パースペクティブ・メディアの小口日出彦氏だ。自民党の情報戦略立案に携わった経験を持ち、その舞台裏を記した『情報参謀』(7月20日発売)の著者である小口日出彦氏が、このチャートを用いながら、今回の参議院選挙の報道と、与党勝利の要因を分析する――。

支持率の「春一番」

7月10日に投開票が終了した第24回参議院選挙は、選挙の終盤に入ってもあまり盛り上がらず「風が吹かなかった選挙」などと評価されている。無風選挙は与党が有利。結果もその通りとなった。

だが、その「無風状態」がどのように生じたのか――はあまり語られていない。本稿では、世論調査結果の推移や選挙関連の報道量の推移をデータ分析する手法で、なにが、どのようなプロセスを経て無風状態をもたらしたのか――普段あまり政治と共に語られることのない「情報の構造」を、明らかにしたい。

まず世論。

安倍内閣の支持率は、ここ1年弱の間一貫して45%から50%の水準を維持しており、内閣支持率としては安定した高水準と言えた。特に16年5月末には伊勢志摩サミットでオバマ大統領の広島訪問を実現したことが非常に好感されて急上昇した。政党支持率の面でも、与党・自由民主党の支持率も35%から40%の範囲で安定していた。一方、野党側は、民進党が10%弱、共産党が5%弱の水準。選挙前にわずかに上昇する気配はあったものの、低いところから動かなかった。

与党と野党のどちらの支持率も数字が安定していた――つまり、「無風=凪」の状態が明白だった。自民vs野党の支持率の差は、いわゆる「一強多弱」の支持構造が大差のまま縮まっていないことを端的に示していた。

唯一大きく動いたのは、「特に支持する政党がない」と回答している、支持なし層の水準である。支持なし層は16年6月初旬までは35-40%で推移していたが、選挙直前に急激に低下して30.1%まで落ちた。しかしながら、この変化は、ここ数年の選挙で必ず現れる「お約束のパターン」なのである。

選挙が近づくと、普段は政治をあまり意識していない人が「やっぱり自民党はイヤだな」などと、なんとなく態度を決めて回答するようになる。それが数字に表れるわけだ。

世論調査の長期波動を見てみると、2013年7月の参院選、2014年12月の衆院選、そして今回の参院選と3回連続して同じパターンの変化が現れており、しかも、急激な変化の「底」は、必ず30%プラスマイナス1ポイント以内の値に収まっている。

「春一番」とか「木枯らし」とか季節の変わり目になれば必ず吹く風のようなものだと言える。これは想定内の風だから、慌てて対応しなければならないような変化ではない。

自民党の立場からすれば、このような状況の下で自ら新しい「風」を起こすような動きに出る必要はない。力をためて押し切る戦いに専念すればよいわけだ。その判断は、まさに今回の自民党の参院選公約のタイトルに表れていた。すなわち「この道を、力強く、前へ」ということになったのである。

(なお、政党支持率などの数字は、定常的に世論調査を実施している新聞社・テレビ局・通信社11社の結果を平均して連続的にプロットした結果から得られたものだ。)