医療・健康・食 週刊現代
内視鏡・腹腔鏡手術の真実
〜新人とベテラン、どっちの医者も危ない

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〔photo〕iStock

突然の出血で大パニック

「よその病院に助っ人として呼ばれて、手術に立ち会ったときのことです。腹腔鏡による初期胃がんの手術で、執刀医は30代半ばの若い医者でした。彼は若いのに腹腔鏡手術の経験が豊富だという評判でした。

ところが、手術中にアクシデントが起きた。思わぬ出血が広がり、血が止まらなくなって腹腔鏡では対処しきれなくなったのです。

通常だとこういう場合、腹腔鏡手術から開腹手術に切り替えます。ところがこの若い医師はなかなか開腹手術を始める決心をしない。オペ室の緊張感が高まり、執刀医はパニックに近い状態になった。結局、私が強く開腹を進言し、ことなきをえたのですが、心底ハラハラしました。

あとで聞いてわかったことですが、この若い医者は腹腔鏡の手術ばかりをやっていて、そもそも外科医の基本である開腹手術の経験が少なかった。それでなんとしても腹腔鏡手術を進めようとしてパニックに陥ったんです」

こう語るのは、都内の大学病院に勤める40代の外科医だ。

鼻や口、肛門から管を入れて行う内視鏡手術や腹部に小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術は、体にメスを入れる開腹手術に比べて体に対する負担が少ない「低侵襲手術」として広く行われるようになっている。

だが、低侵襲の手術だから安心というわけにはいかないのはこのエピソードを見ればわかる通りだ。

内視鏡や腹腔鏡の手術はモニターを見ながらの手術になる。執刀医が直接、患者の臓器に触れることもできない。手術中の視野はとても狭くなるし、患者の腹の中でなにが起こっているのか、直接見ることができないのだ。

がんの手術だったら予想以上にがんが広がっていることだってあるし、心臓手術であれば、不意に脈が停止してしまう可能性だってある。そうしたときにとっさに手術法を切り替えられなければ、命取りになる。