野球
祝200勝!長谷川滋利が明かす、名投手・黒田の魅力と、アメリカでの「本当の評判」
【ベースボールでビジネスがわかる】
ニューヨークヤンキース時代の黒田投手【PHOTO】gettyimages

昨年春、ニューヨーク・ヤンキースからの推定年俸21億円のオファーを蹴り、同4億円の契約で「ファンにもう一度自分のユニホーム姿を見せたい」と古巣・広島カープに戻った黒田博樹投手。昨オフも引退と現役続行の間で揺れたが、現役続行を決断。その男気溢れる右腕が日米通算200勝という大記録を達成しました。今回は長谷川滋利さんが、アメリカでの黒田投手の評判や、彼の素顔について語ります。

複数年契約ではなく単年契約を求める理由

彼と初めてちゃんと話をしたのはメジャーに来る直前くらいですかね。所属事務所が一緒だった関係でいろいろアドバイスする機会があって、何度か飲みに行ったりもしました。そんなに自分からしゃべるタイプではないけど、ニヒルに笑うおもろいヤツですね。意外とコテコテの関西人ですし。

その後、僕がその事務所を離れても変わらず接してくれる、後輩としても友人としても「ええヤツ」ですね。それは最初から一貫して印象が変わらないし、野球関係の僕の人脈でもトップクラスにええヤツかもしれないです。

あとは、これはメジャーでやっていくためには意外と大事なのですが、しっかり自分の言葉を持っています。メジャー来た年に「刑務所に入るつもりで頑張ります」とコメントしてて「アメリカはそんな怖いところちゃうで」と本人も交えてみんなで笑ってたんですけど、自分なりの覚悟を言葉にするとそんな感じだったのでしょう。

それからは会うたびに「しんどい」と言ってましたね。メジャー最後のシーズンにも何度かインタビューしたんですが「そろそろ(引退して)サンタモニカあたりでゆっくりしたいです」なんて笑いながら言ってました。もちろん半分冗談ですが、彼の言葉は照れ隠しでもなんでもなく、ほんとに毎日、全身全霊で野球に取り組んでいるから出てくる言葉だと僕は解釈しています。

その姿勢の表れとして、彼はアメリカに来て以降はずっと短い契約を重ねてます。07年のメジャー移籍時こそ3年契約でしたが、あれは実はドジャースの提示した4年契約に対して、黒田投手本人が3年契約を直訴して1年減らしてもらっているんです。その3年契約が満了した後にドジャースと1年で再契約を果たしています。

翌年のヤンキース移籍時も1年契約を結んで、そのあとの3シーズンの契約もすべて単年契約でした。彼は身体が強くてケガもしたことないし、あれだけの実績があれば例えば4年8000万ドルとか、そのレベルの大型契約だって結べるはずです。球団はそうしたかったかもしれない。

でも、そこが黒田投手の律儀なところというか真面目というか、彼の本質ですよね。複数年契約を結んで、最初のシーズンの春でケガしたらチームに迷惑かけてしまうと思っているでしょうし、きっと彼はシーズン終わった時に改めて自分の中に次のシーズンに対してのモチベーションを探しているんだと思います。ケガのことは考えずにまずは目の前の1年、全力で投げようという姿勢ですよね。

複数年契約を結ぶと、どこか頭の片隅で「3年契約してケガせんように、3年間頑張ろう」と思ってしまうのが人間ですよね。そうすると優先順位としては「いいプレーしよう」というより「ケガせんように」が上に来てしまうかもしれない。それも嫌なんでしょう。いずれにしてもやっぱり真面目で律儀で、不器用なええヤツですよね。