メディア・マスコミ 週刊現代
辛いときに「勇気」をくれたもの〜フリーアナ・町亞聖が選ぶ「人生最高の10冊」

辛い時期に出会った一冊

高校生のときから母の介護が始まったこともあり、勇気づけられる言葉がほしくて、本に没頭するところがありました。

病めるときも』は三浦綾子さんの短編集。最初に手にしたときは、まだ母は元気で、まさか病に倒れてしまうなんて夢にも思っていませんでした。母の介護に直面し、再びこの本を読み返すと見えてくるものが違って、三浦さんの本を次々と読みました。

表題作は、婚約者が結核菌の研究者で、薬の開発に成功したと思ったら研究室が全焼し、精神を病んでしまう話。主人公の女性に次々と不幸が襲いかかってくるんです。

三浦さんの作品に共通しているのは、主人公が誰かを恨みそうなときにも、前を向こうとしていること。聖書の中にある「神様は背負いきれない荷物を背負わせない」という言葉をふと、思い出しました。もう何回も読んできたので、家にある本は表紙もぼろぼろです。

向田邦子さんの『幸福』は、ドラマのシナリオ集です。妹が姉の破談になった婚約者の弟と交際する話で、姉とその弟との間に何かあったらしい。シナリオなので、ほとんど会話の構成ですが、自分がそこに居合わせているかのように思わされる。タイトルに反して、出てくる人たちがみんな幸せとは縁遠いんです。

印象深いのが、弟が姉妹の祖父と縁側で指相撲をするシーン。互いに無口で、人間って、肝心のときに言いたいことが言葉にならないという思いの深さを知らされますね。

3位の山崎豊子さんの『沈まぬ太陽』は、私が報道に異動になった頃に読みました。日本を代表する航空会社が舞台の長編小説で、主人公の恩地さんは組合闘争で左遷され10年間、中近東やアフリカの僻地などを転々とする。それでもけっして屈しない。異動でへこんでいたときだけに「私なんかまだまだ」と発奮させられました。

「片目の猿の国では、両目の猿はおかしいとされる」という話が出てくるんですが、組織の中では「非常識」が常識となる。ジャンボ機の墜落事故で何百人もの犠牲者を出しながら、私利私欲に拘泥する人間の驕りがすさまじく、何年もかけて取材を重ねて書かれたものだけに重みがあります。