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移民大国アメリカの揺らぐ“自画像”~トランプ支持の一大要因「移民問題」の真相
不法移民1000万人!
〔photo〕gettyimages


文/西山隆行(成蹊大学教授)

トランプが支持される背景

アメリカの大統領選挙に出馬しているドナルド・トランプは、幾度となく、メキシコからの移民が、麻薬や犯罪、強姦などの問題をアメリカ社会に持ち込んでいると評している。

さらにトランプは、不法移民の入国を防ぐためにアメリカとメキシコの国境に巨大な壁を築き、その費用をメキシコ政府に負担させるとまで主張した。

一連のトランプの発言は良識ある人々の反発を招いたものの、驚くことに共和党支持者の間での支持率は上昇し、トランプは2016年の大統領選挙で共和党候補となることを確実にしている。

トランプの発言がアメリカで支持を得ている背景に、人口変動がある。

"移民の国"であるアメリカには、毎年100万人ほどの合法移民が入国している。近年では中南米系とアジア系の移民が急増しており、中南米系の人口は2000年からの10年間で全人口の12.5%から16.3%へと増加して、今や黒人人口を超えている。

他方、白人(中南米系を除く、以下同様)は、1960年には人口の85%を占めていたものの、2050年には50%を下回ると予想されている(Pew Research Center調査より)。社会の多数派の地位を失うことを恐れている白人、とりわけ労働者階級の白人がトランプを支持しているのである。

それに加えて、国境線を不法に越境する者や、ビザの期限が切れた後にも不法滞在する人々が1000万人以上存在する。不法移民の相当部分を中南米系が占めていて、彼らがアメリカ社会に多くの負担を強いているとの懸念が示されているのである。

このように、今日のアメリカでは、合法・不法を問わず、移民問題が重要な争点として浮上している。そして、トランプら共和党系の保守派が移民問題を積極的にとりあげるのは、バラク・オバマ政権の移民政策に対する反発という側面がある。