AI
最強将棋ソフトの開発者が問う
〜人工知能の未来、そして人類が迫られる「価値観」の大転換

将棋の世界で起きたことは、あなたにも起こる
〔PHOTO〕gettyimages


文/山本一成(Ponanza開発者)

人工知能の勢いを証明した2連勝

「負けました」

山崎隆之八段が敗北を認めた。

2016年5月22日、比叡山延暦寺。1200年の歴史を誇る寺院の一角で、一つの勝負が終わった。

電王戦――。プロ棋士とコンピュータ将棋プログラムが戦うこの棋戦も今年で5年目を迎えた。これまでに17回の戦いが行われ、結果はプロ棋士側からみて5勝11負1引である。

対戦条件やルールなど細かい変更を重ねており、プロ棋士側が巻き返すこともあるのだが、長足の勢いで進歩するコンピュータを相手に、年々プロ棋士側が苦しい状況に追い込まれている。

今年は山崎八段と、私が作ったプログラム「Ponanza(ポナンザ)」の2番勝負が行われた。お互い人間・コンピュータ同士の予選をくぐり抜けてきた王者決定戦ともいうべき形だ。

しかし、私はあまりPonanzaが負けるとは思っていなかった。Ponanzaはここ数年でおぞましく強くなった。初めてプロ棋士に勝ったときのPonanzaに対して、今のPonanzaは98%程度の勝率があるからだ。

普通の戦いをすれば山崎八段が勝つのはかなり難しい。ある種のハメ手に近いことを発見できなければ、負けることはないと予想していた。

そして結果はPonanzaの2連勝――。昨今の人工知能の勢いを裏付けるようであった。