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中国巨大市場でシェア4割! “自転車”産業で成功した日系企業、その驚くべき「先行戦略」
利益と文化を創出した台湾メーカーにも注目
駒形 哲哉 プロフィール

鰻の養殖から自転車産業のリーディングカンパニーへ

これに対し、Giantブランドで知られる台湾の自転車メーカー巨大機械工業(以下ジャイアント社)は、リーディングカンパニーとして、業界の流れを創造・先導する役割を果たしている。

同社は台湾に2つ、中国大陸に6つ、オランダに1つの計9か所の生産拠点、日本を含む世界15販社をもち、2015年実績で550万台の完成車をグローバルに供給する。生産台数のうち自社ブランドが7割、TREKなど著名企業からの受託生産が3割を占める。

目下、スポーツタイプの自転車のうち一定水準以上の品質で量産可能なメーカーはジャイアント社を含む何社かの台湾系企業に限られるため、自社ブランドを確立してからも、競合するブランドメーカーから生産を受託している。

様々な仕事に従事し最後は鰻の養殖を行っていた劉金標氏(現会長)が、台風で養殖事業に失敗したことを契機に、1972年にジャイアント社を創業して自転車業界に入った。

78年に米大手メーカー・シュウィン社の受託生産を始め、一時は同社に販売の8割を依存した。81年から台湾で自社ブランドを立ち上げてはいたが、シュウィンが調達先を中国深圳のメーカーに切り換えるという、ジャイアント社の生死を左右する事態に直面したため、86年に欧州に進出した。

その後、グローバルに販売拠点を展開しながら、技術力の向上と自社ブランドの確立に努めることになった。

他方、中国大陸の情勢を見極め、1993年には中国市場と輸出の両方を狙って中国に生産拠点を設置した。90年代には台湾系企業の大陸進出が本格化したが、90年代半ば以降、生産受託者として中国大陸系企業が台頭したことにより価格競争が激化し、台湾本土の自転車生産は危機に瀕した。

このような危機的状況に対し、ジャイアント社が主導する形で台湾メーカー間アライアンス(A-team)を形成して、トヨタ生産方式の学習、相互研修を展開し、台湾自転車産業は高品質、高機能、高付加価値化を図っていった。この活動の成果は中国生産にも生かされることになった。

ジャイアントは世界的な自転車競技への参加・競技者への機材提供とブランドメーカーからの生産受託により技術水準を高め、また上記の活動で高水準での量産体制を可能にした。

さらに2000年代に入り、カーボン素材が自転車フレームに応用される段階になると、競技に機材を提供できるメーカーは限られるようになった。そのなかで、ジャイアント社は自社で繊維の製造工程からフレーム製造工程まで一貫して行う生産体制を築き、技術的優位を確立した。