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「爆買い観光客」がどれだけ増えても、人口減少に苦しむ地方は救われない

地方はどう変わればいいか?
貞包 英之 プロフィール

地方都市における爆買いの展開

その意味では、地方都市に観光客を呼び寄せようとする施策も、まったく見込みがないわけではない。

拙著(『地方都市を考える』花伝社、2015)でも指摘したが、「消費社会」は大都市だけではなく、地方都市でも一定の厚みを持って展開している。安価な生活コストを背景に活発な消費が続き、それが地方都市のとくに郊外で買える商品の質と量を底上げしてきた。

そのおかげで、消費のためだけなら、今ではわざわざ大都市に行く必要は少ない。地方のショッピングストアやドラッグストアでは豊富な商品が安価に売られ、それを人混みの少ない快適な環境で買うことができる。

だからこそ沖縄のイオンモール沖縄ライカム、愛知のイオンモール常滑など街の中心部を離れたショッピングモールが、しばしば主要な観光の目的地になっているのである。

実際、買い物を大きな目当てとして、昨今、地方都市でも観光客が増加している。西日本を中心に、またクルーズ船やLCCの便が良い場所に偏っているとはいえ、2014年から2015年にかけて地方では、三大都市圏の41.6%を超える59.9%の外国人宿泊数の増加がみられた(『観光白書』)。

「爆買い」の行方――日本に立ちはだかる最大の問題

ただしこのまま地方、または日本全体で、買い物を中心とした訪日客の増加が続いていくとは考えにくい。最近の急激な円安のせいだけではなく、さらにそれを阻む構造的な要因が考えられるためである。

最大の問題は、アジアにおける「消費社会」のいっそうの進展である。単純化すれば、自国で買えない商品を求めて、多くの観光客は日本にやって来ている。しかしアジア地域で購買力が成長し、輸入の増加や自国の市場の充実がみられるなかでは、わざわざ日本という外部の「消費社会」に幻想をみる必要はなくなる。

その意味で、先にみたように中国からの訪日客が、2015年に買い物に一人あたり16万円を超える額を使っているのは、やはり「異常」とみるべきだろう。

この金額は2010年の9万円台から1.7倍以上急増したものだが、たとえば同期間の韓国からの訪日客では、買い物で使った額は2万4823円から2万3516円へとむしろ減少している。

為替や日本からの近さに加え、「消費社会」の成熟度の差異が、おそらくこうした違いを生んでいる。韓国では部分的には日本以上にモールやネットが発達し、そのためコモディティに限れば韓国で買えない日本の商品は少ない。だからこそ日本にわざわざ来てモノを買う必要はないのだが、同様にグローバルな物流の成長を前提に「消費社会」が中国でも成熟していけば、中国人訪日客の消費額もいずれ同程度の水準にまで落ち込んでいくと考えられる。

実際、以前は訪日客を多く受け入れていた量販店や百貨店の苦戦が最近伝えられることからみれば、中国人の「爆買い」離れは、すでに始まっているというべきだろう。