医療・健康・食 週刊現代
本当は手術しないほうがいい「がん」〜「とにかく切らなきゃ!」は日本のおかしな風習だ
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身体の一部を失うということ

喉に悪性腫瘍ができる咽頭がんと喉頭がん。昨年、音楽プロデューサーのつんく♂が、喉頭がんの手術を受け声帯を摘出したことは記憶に新しい。

『がんで死ぬのはもったいない』や『何のために生きるか』など、がん治療に関する著書も多い平岩正樹外科医が語る。

「たとえば、早期の咽頭がんの場合、手術ではなく放射線治療であれば、声帯を摘出する必要がないので、声を失うこともありません。

人それぞれ状況が違うので、『どんな犠牲を払っても手術をしたほうがいい』というのは早計です。その人の年齢や生活スタイル、価値観によって、いろんな選択肢があってしかるべきです」

命と引き換えに声を失う——。生きるためとはいえ、手術の「代償」はあまりに大きい。

しかも喉頭がんには、こんなデータもある。昨年、アメリカのケースウエスタンリザーブ大学を中心とした研究グループが「進行した声門上の喉頭がんは手術をしてもしなくても、生存率はほぼ変わらない」という調査結果を発表した。

'90年から'13年までの喉頭がん患者のカルテを分析した結果、手術をした人の5年生存率が約50%だったのに対し、手術をしなかった人(放射線や抗がん剤治療を選んだ人)も約50%と同等だったことが明らかになったのである。

当然ながら発声機能については、手術をしなかった患者のほうがより維持されていた。

「がんになったらもう切るしかない」、「手術しか助かる道はない」と患者にすすめてくる医者がいる。だが、一度立ち止まって考えてほしい。がんの手術は、身体の一部分を永遠に失う、という負の側面に加えて、手術をしても長生きするどころか、逆に健康寿命が縮まる危険性もあるのだ。