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破天荒経営者が明かす「社員の再生術」〜ドラッカーの言う通りになんて人は動かない!
「ステーキのあさくま」森下篤史社長に聞く
〔PHOTO〕gettyimages(写真はイメージです)

破天荒創業者の登場だ。あさくま・森下篤史社長(69歳)。みずから「事業狂」と語る通り、'83年に食器洗浄機のメーカーを創業すると、'97年には中古厨房機器の買い取り・販売を行う「テンポスバスターズ」を起業、上場に導いた。さらには'06年、「ステーキのあさくま」再建に乗り出し、'15年には日本経済新聞社が調査する「店舗売上高伸び率ランキング」上位へと導いている。彼一流の経営術は「社員の再生」。その秘技を聞いた。

(取材・文/夏目幸明)

2つの「ばかたれ」

着服

腹の立つことばかりだよ。友人の娘婿を雇ったら、そいつが担当する店舗の従業員たちから「目標達成の報奨金がもらえてない」と問い合わせがあった。なんと、その娘婿が着服してたんだ。

彼を「ばかたれ!」と叱って「警察で罪を償うか、従業員たちの赦しを得るまで店のパートとして働くか」と聞いたら、ヤツは涙を流しながら「働かせていただきます」と言った。

あとで、その友人が「懐の深さに感謝する」と言うから、俺はこう伝えた。「今、お前の義理の息子は、『どんな困難も乗り越えよう』とか思ってるだろうが、人間は針のむしろの上に何ヵ月もいられるものじゃない。お前の出番はアイツがくじけそうな時にフォローすることだよ」と。

人間は弱い。なかなか思い通りにはならない。そんな奴らの面倒を見るんだから、経営者は腹が立つことばかり。だけど、それでも人を育てなきゃ事業は始まらない。

背中

ドラッカー(経営学者)のばかたれは「社員に目標を与え、動機付けし、正当に評価すれば人は伸びる」なんて言った。しかし、少なくともあさくまの社員は、目標を設定しても一瞬やる気になるだけ。

たとえば皆に「英会話を学ぼう!」とハッパをかければ、1ヵ月間、勉強を続けてくれるかもしれない。でも絶対、じきに飽きてやめちゃう。

じゃあどうすれば継続させられるかと言えば、間違っても「英語を話すことにはこんな価値がある」と動機付けしてテンションを上げることなんかじゃない。答えは簡単。毎日「さあ、始めるぞ」と背中を叩いてやるしかない。

4JOB

あさくまが再生したのは「単細胞経営」を打ち破ったから。買収前のあさくまは「人件費率が高すぎる」とスタッフを減らしたらお客さんの満足度が下がり、いい肉を出したら客数が増えても利益を出せなくなっていた。

こんな単細胞生物が考えたような単純な施策じゃなく、デメリットがないことをやらなきゃいけない。

たとえば店員教育。「いらっしゃいませ」とお客様をご案内したら、厨房に戻る間、他のお客様のコップに水を注ぎ、皿を片付け、サラダバーに補充すべきものがないか確認する。

1度フロアへ行ったら4つ仕事をこなす、「1WAY・4JOB」。これを癖になるまで実行してもらった。すると、スタッフを減らしても顧客満足度は変わらなかった。経営はこうでなきゃ。

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