医療・健康・食 週刊現代

現役医師が明かす「内視鏡・腹腔鏡手術」、そして「全身麻酔」の意外なリスク

自分の身は自分しか守れない
週刊現代 プロフィール

外科医が告白
「体力のない老親に全身麻酔は絶対に受けさせない」

死と隣り合わせの「劇薬」

「外科医になりたての頃ですが、変形性腰椎症の患者さんの手術があり、私が全身麻酔の処置をしたのです。80代の患者さんでしたが、手術が終了すると、息をしていないことに気付きました。すぐに心肺蘇生を行い、集中治療室に運びましたが、数日後に亡くなりました。

結局、死因はうやむやになりましたが、麻酔の影響で心筋梗塞を起こした可能性が高い。似たような事例で亡くなっている高齢者は、全国でたくさんいると思います」

こう語るのは、現在は都内の大病院に勤める外科医。麻酔科のある大病院では、たいてい麻酔科医が手術に立ち会うことになるが、小さな病院だったり、簡単な手術だったりする場合は外科医が自身で麻酔をかけることがある。

「この経験から、私は人一倍手術時の麻酔には気を配るようになりました。自分の家族、とりわけ年老いた両親には安易に麻酔を受けさせたくないですね。また、専門の麻酔科医がいない小さな病院では絶対に手術しないほうがいいと思います」(外科医)

手術に麻酔はつきものだが、その危険性は意外に正しく理解されていない。広島大学病院の麻酔科医である讃岐美智義氏が語る。

「麻酔手術は劇薬を使用するため、正しく使わなければ死と隣り合わせであることを理解しなければなりません。

例えば、マイケル・ジャクソンを死に至らしめたのは、日本でも静脈麻酔薬の主流となっているプロポフォールです。呼吸抑制作用があり、投与中は呼吸状態を監視していなければなりませんが、マイケルを診ていた医師は気道確保すらせずその場を離れ、事故が起きたのです」

ただでさえ劇薬であるのに、手術を受けるのが高齢者であればリスクはさらに増す。手術前には患者が麻酔に耐えられるかどうか、十全なチェックを行う必要がある。東京慈恵会医科大学附属病院の脳神経外科教授で、脊椎・脊髄疾患の専門家の谷諭氏が語る。

「全身麻酔は飛行機が飛ぶのと同じで、『離着陸』がいちばん危ない。つまり麻酔の効き始めに呼吸が止まるときと、効き終わりで人工呼吸器を外すときが危険なのです。心肺機能が強く、手術に耐えられるだけの体力がある患者にしか麻酔手術を施すことはできません」